トランプ米大統領の11月7、8日の韓国訪問は、その重要性の順位で1952年12月のアイゼンハワー次期大統領の韓国訪問の次ぐ。アイゼンハワーは11月の大統領選挙の遊説で停戦協議が長引いている韓国戦争(朝鮮戦争)を早期に終息させるため就任前に韓国を訪問するという公約をした。彼は汝矣島(ヨイド)空港に到着し、東崇洞(ドンスンドン)第8軍司令部で過ごしながら米軍将軍や兵士から戦争状況について聞き、軍用機で戦線の地形地勢を観察した。

彼は北進統一を叫ぶ李承晩(イ・スンマン)大統領に会うのを避けた。アイゼンハワーは中央庁広場の市民歓迎大会もボイコットした。壇上の閣僚と壇下の数万人の市民は虚しく帰っていった。李承晩はあきらめなかった。彼は12月の酷寒にスーツ姿で光陵(クァンヌン)の韓国軍修道士団を視察中のアイゼンハワーを訪ね、ようやくプライドが高い次期米国大統領にしばらく会うことができた。米軍の将官の一人が寒さに震える李承晩に野戦ジャンパーをかぶせた。
(中略)

李承晩が自分を避けるアイゼンハワーを景武台に招致して会談していなければ、アイゼンハワーの戦争中の訪韓は韓米関係史に大きな一線を刻むことはできなかっただろう。

トランプ大統領は韓米関係が完全に違う状況で韓国に来る。アイゼンハワーは進行中の戦争を終わらせに来たが、トランプ大統領は戦争を防ぎに来る。アイゼンハワーの訪韓の結実である韓米同盟が60年余り守ってきた韓半島の武装平和がいつ壊れるか分からない、戦雲が迫る韓半島がトランプ大統領の訪韓の背景だ。北朝鮮の挑発であれ米国の先制攻撃であれ、韓半島がまた黙示録の現場になるかどうかは、トランプ大統領がソウルで世界に向かって発信するメッセージにかかっている。

いま北東アジアにはトランプ大統領の活用を待つ鼓舞的な変化の兆候が表れている。中国の習近平主席が現在開催中の共産党大会で執権2期目の枠を作り、米中関係と韓半島問題にさらに積極的に接近するだろう。彼の目標は共産党創立100周年の2020年までに中国を全面的な小康社会にすることだ。小康社会とは、衣食住の心配がない国民が若干の文化生活を享受する社会をいう。韓半島周辺地域の安定なく小康社会は作れない。第2の韓国戦争は、中国現代史で毛沢東とトウ小平に並ぼうとする習近平主席の夢をはかない白昼夢として吹っ飛ばしてしまうだろう。したがって中国は今よりも積極的に対北朝鮮制裁と圧力に同調するはずだ。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が中国の警告を無視して中国の門前で危険な火遊びを続ければ、習近平主席は中国の独自の圧力を加える可能性が高い。トランプ大統領との会談では北朝鮮問題に関する持続性のある解決策が議論されるとみられる。我々が警戒するのは韓国が抜けた米国・中国間の韓半島ビッグディールだ。キッシンジャー元国務長官を含む米国の親中派現実論者がそのような方向に雰囲気を作っている。

トランプ大統領がソウルで発信するメッセージは最大の圧力と制裁であり、北朝鮮は核・ミサイル挑発をやめて対話のテーブルに出てこいという要求と警告となるだろう。トランプは思いつきでツイートしながら経済的利益を握る、無知だが賢い商売人だ。彼は文在寅(ムン・ジェイン)大統領を相手に韓米FTA(自由貿易協定)と最先端武器で優位に立とうとするはずだ。トランプ大統領の北東アジア訪問がそのように流れれば彼にとって不幸なことだ。今日の北東アジアは、トランプ大統領が米国の利益ばかり考える三流政治家(politician)から、戦争の危機を防いでアジア・太平洋地域国家の共同繁栄の礎石を築いた大政治家(statesman)に飛躍する多くない舞台であり機会だ。深刻に冷え込んだ南北関係の水面下でもわずかに暖流の兆しが見えるのも、トランプ大統領の大政治家づくりにプラスになるだろう。

金永熙(キム・ヨンヒ)/コラムニスト/論説委員

ソース:中央日報/中央日報日本語版【コラム】トランプ大統領が韓国に来るが
http://japanese.joins.com/article/584/234584.html?servcode=100&;sectcode=120