国内で約4500万人が利用するとされるツイッターで、最近、特に人種や国籍などを理由に差別をあおる投稿が横行していると批判が高まっている。ヘイトスピーチ対策法ができて1年たつが、表現の自由を確保する一方で、いかに差別を防ぐか。運営会社は対応を迫られている。

「差別主義に対する規制や排除の姿勢に乏しい」。先月8日、差別に反対する市民グループが東京・京橋のツイッタージャパン本社前に集まった。特定の国や民族に対し、「滅んでほしい」などの投稿を印刷。本社前の路上に敷いて同社に抗議した。

こうした動きを受けてツイッタージャパンの笹本裕代表は「ご指摘を頂いている問題に関しては真摯(しんし)に受け止めております。ツイッター社員は全員がNo Hateを願い、この問題に対応する為(ため)に人的にも技術的にも拡充・改良して参ります」とツイッター上で異例の説明をした。

「残念ながら問題のあるツイートの処理件数も増えています。対応を強化するため、社内の改善を急いでいます」との方針も示した。

ツイッター社が、こうした差別をあおる発言を放置しているとの批判は以前から根強かった。9月には、俳優の水原希子さんが出演するビールのCMを紹介したサントリーのツイートに対し、「なぜ日本人を使わないのか」などの反応が多数あった。

水原さんのルーツが米国と韓国にあることから「エセ日本人がCMしてるから買わない」などとツイートする人たちもいた。水原さんは「この世の中の人種や性別などへの偏見がなくなってほしい」などと投稿した。

ツイッター社も無策だったわけではない。「中傷、悪口、人種や性差別的発言など、他者の尊厳を低下させる内容を繰り返す行為や、相手の品位を損なうような投稿」を禁じ、違反した場合は利用を凍結する場合もあるとの方針を公開している。

今年7月には「去年の今頃と比較すると攻撃的な行為を行っているアカウントに対して10倍以上の措置を行っています」との声明を出し、毎日何千ものアカウントに、機能の制限をかけたり、凍結したりしていることも明らかにした。

それでも、ヘイトスピーチに詳しい弁護士の師岡康子さんは「ヘイトスピーチを受けたマイノリティーにとっては、命や人権にかかわる重大な問題なのに、ツイッター社の対応は不十分だ」と指摘する。

「日本では利用者数も多く影響力が大きいのに、問題の投稿が削除されるまでに時間がかかりすぎる。明らかなヘイトスピーチであっても削除要請が認められないことも多い」といい、師岡さんが依頼を受けて削除を依頼して実現したケースでも、2、3カ月かかった例があるという。

ツイッター上での自由な表現空間の確保を維持しつつ、差別的な投稿にどう対応すべきなのか。曽我部真裕・京都大教授(憲法)は「急ぐべきは、ツイッター社が法や自社のポリシーに反する投稿に迅速にきっちり対応できる仕組みを作れているのかどうか、情報を開示することだ」と指摘する。

削除要請の数、削除の基準、実際の削除数、対応する人員の数――。曽我部さんは「そうしたデータを示さず透明性が低い運営をしているので、ツイッター社が何もしていないのではないかと不信感が高まっている」とみる。

ツイッター社がヘイトの範囲を狭くとらえすぎているとの批判もあるが、「規制が強まれば失うものもある。そこは議論を続けるしかないだろう」。

ネット上での差別表現の実態については詳しい調査が少ないが、法務省の委託を受けた人権教育啓発推進センターによる昨年度の外国人住民調査では、外国人を排除するなどの差別的な記事や書き込みをネット上で「見たことがある」と答えた人は、回答者3396人のうち1411人(41・5%)に上った。

目に入るのが嫌で、「そうしたインターネットサイトの利用を控えた」と答えた人は674人(19・8%)。「自分のネット上の投稿に、差別的なコメントを付けられたことがある」人は145人(4・3%)いた。差別を受ける恐れがあるため「ネット上に自分のプロフィルを掲載するときも、国籍、民族は明らかにしなかった」と答えた人も503人(14・8%)いた。

http://digital.asahi.com/articles/ASKBW4SMJKBWUTIL02N.html

>>2以降に続く)