韓国検察当局は1日、ロッテグループの辛格浩(シン・ギョクホ)総括会長(95)=日本名・重光武雄=に対する論告求刑公判で、懲役10年、罰金3000億ウォン(約308億円)を求刑した。

 ソウル中央地裁で開かれた公判で、検察は辛格浩被告について、犯行を最初に決心して指示を下したという点で、辛東彬(シン・ドンビン)被告(ロッテグループ会長)=同・重光昭夫=と共に主犯の位置におり、年齢と健康状態を考慮しても、厳しい刑事罰が避けられないと主張した。

 辛格浩被告は昨年10月、長男の辛東主(シン・ドンジュ)SDJコーポレーション会長=同・重光宏之=と事実婚の関係にあるソ・ミギョン氏(57)親子に対し、会社への勤務実態がないにもかかわらず、508億ウォンの給与を支払ったとして起訴された。辛格浩被告は認知症の症状がある。大法院(最高裁に相当)は昨年6月、辛格浩被告について、正常な意思決定が不可能な状態だと判断し、限定後見人の選任を決めた。公判に車椅子で出廷した辛格浩被告は、裁判を受けているという事実すら認識できないように、不規則な発言を行った。

 法曹界では、そんな状態の辛格浩被告に検察が懲役10年という重い刑を求刑したことの妥当性に疑問の声が上がっている。辛格浩被告の弁護人は法廷で「辛格浩会長が愛国心と経営哲学を非難されることなく、経済界を静かに引退できるようにしてもらいたい」と訴えた。10月30日の公判でも弁護人は「記憶力をほとんど失い、自己防衛能力がない辛格浩会長を前科者にしないでほしい」と述べた。

辛格浩被告は同日の公判で、裁判長や検事が発言中、弁護人に「今何をしているのか」と繰り返し腹を立てた。「今裁判中であることが分かりますか」という裁判長の問いには「よく分からない」と答え、「なぜ裁判をやるのか」と問い返した。弁護人が「会社資金を横領したので、裁判を受けている」と告げると、「横領する理由がないのに、誰が起訴したのか」と怒った。判事出身の弁護士は「事実上収監生活が不可能な人物に懲役10年を求刑することに何の意味があるのか」と指摘した。

 検察は30日に辛格浩被告の次男、辛東彬被告(62)にも懲役10年、罰金1000億ウォンを求刑した。検察は「ロッテのオーナー一族が想像可能なあらゆる方法を使い、企業財産を私有化した。その規模は例がないほどで、厳しい処罰が必要だ」と主張した。

 検察は昨年6月から4カ月以上にわたり、ロッテグループに対する大規模な捜査を行った。検事20人余りと捜査官200人余りを投入し、10回余りにわたる家宅捜索を行い、ロッテ関係者400人を取り調べた。しかし、捜査着手当時、ターゲットとしていたオーナー一族の秘密資金は発見できず、脱税捜査へと方向転換した。

 検察は辛東彬被告らロッテ幹部9人の逮捕状を請求したが、6人については請求が棄却された。裁判所は辛東彬被告の逮捕状請求を退け、「犯罪容疑に対する法理上の論争の余地がある」と指摘した。捜査の第一段階である犯罪容疑の合理的推定がなされなかったことになる。

 検察の求刑は裁判所が基準とする法定刑や量刑基準を逸脱するものではなかった。しかし、法曹界からは捜査結果に比べ、検察の求刑が重過ぎるとの指摘が出ている。ある弁護士は「検察が財閥捜査に対する国民感情などを考慮し、メンツを失わないように重い刑を求刑したのではないか」と指摘した。

シン・スジ記者

2017/11/02 10:39 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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