社説

米大統領の日中韓歴訪 北朝鮮非核化へ具体的戦略示せ

トランプ米大統領が日本、韓国、中国の東アジア訪問を終えた。最大の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル開発断念へ、各国と協調関係を築けるかどうかだった。しかし、トランプ氏は「力による平和」を掲げ、軍事力行使の可能性にも言及。朝鮮半島周辺に空母3隻や原子力潜水艦を展開させ、危機を利用して、日韓に兵器を売り込んだ。武力衝突は絶対に避けねばならず、冷静な話し合いによる解決の道筋を探るべきだ。

軍事力の誇示は、問題解決にとって障害でしかない。北朝鮮に「自衛」と称して核・ミサイル開発や実験を正当化する口実を与えかねない。

トランプ氏と日中韓首脳は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議を順守し、核・ミサイル開発を放棄させるため、圧力が必要との認識で一致した。しかし、北朝鮮と国境を接し、武力衝突が起きれば甚大な被害が予測される中国の習近平国家主席と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、対話を重要視する姿勢も崩さなかった。各国の考えの違いが改めて浮き彫りになった形だ。今後の政策に、大きな進展があったとは言い難い。

圧力をかけるにしても、その後、いかに対話につなげていくかが重要になる。各国は出口戦略となる具体策こそ早急に協議し、道を見いだしていかなければならない。

外交による平和的解決の可能性はある。トランプ氏は米国や同盟国防衛のために「比類なき軍事力を使う用意がある」と強調する一方「北朝鮮が交渉のテーブルに着くことは理にかなっている」と対話の可能性に言及した。北朝鮮は一貫して、米国に交渉を求めている。米朝は威嚇の応酬をやめ、対話の糸口を探ることを優先すべきだ。北朝鮮に影響力を持つ中国には、両国の仲介に最大限努力するよう求めたい。

対北朝鮮政策では関係国の密接な連携が欠かせないが、今回の韓国の対応は問題を残した。トランプ氏出席の夕食会に、元従軍慰安婦を招待し、島根県竹島周辺が産地の「独島エビ」の料理を登場させた。韓国の主張を米側に宣伝する狙いがあったのは想像に難くないが、日本が反発することは予測できたはずだ。不測の事態への懸念が強まる中、文氏は関係国の結束を第一に考えねばならないと自覚する必要がある。

米中両国が、東アジア情勢の安定に及ぼす影響は大きい。しかし、「自国第一主義」を掲げ内にこもる米国は長期的なアジア戦略を欠いている。海洋進出や軍事増強などで覇権拡大に突き進む中国は、首脳会談後の記者発表でアジア太平洋地域の秩序維持の主導権を、米国に一方的に握られたくない決意を示した。米中が自国の思惑や利益を重視して駆け引きを続けることは、北朝鮮問題の解決を遠ざけるだけだ。「大国」を自負する両国は、国際社会で負うべき責務を果たさねばならない。

ソース:愛媛新聞 2017年11月12日
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201711125173