https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171224-00007192-bengocom-soci

台湾の中華航空で12月9日、日本人乗客3人が飲酒や喫煙をするなど大騒ぎをして、飛行機が空港に引き返すトラブルとなったことが報じられた。報道によると、台湾の桃園国際空港バンコク行き853便で、離陸後に酒を持ち込んだ日本人乗客3人が酔って大声を出したり、トイレで喫煙したりするなどの騒ぎを起こしたという。

周囲の乗客からも苦情が出たため、客室乗務員が何度も制止したが従わず、機長が他の乗客の安全を考慮して、離陸30分で桃園国際空港に引き返した。3人は飛行機を降ろされ、航空警察局局に引き渡された。台湾の民用航空法に違反した疑いがあり、最高で5万台湾元(約19万円)の過料が課せられる可能性があると報じられている。また、フライトはこのトラブルによる4時間遅れ、260人に影響が出たという。

一般的に、機内で同様の騒動を起こした場合、どのような法令に触れる可能性があるのだろうか。金子博人弁護士に聞いた。

●多国間条約「東京条約」で定められた機長の権限

航空機内の犯罪や騒動にはどのような法令がある?

「まずは、国際的な法令面を説明しましょう。Convention on Offences and Certain Other Acts Committed on Board Aircraft(航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約)があります。これは、1962年12月に発効した、古くからある多国間条約です。東京で審議採択されたので、『東京条約』と呼ばれています。

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●日本は「甘え社会」

機内の喫煙はなぜ許されない?

「東京条約ができた1962年当時は、離着陸時とトイレ以外は喫煙可でした。しかし、機内は逃げ場のない空間であり、非喫煙者からの苦情が絶えず、1980年代から欧米先進国は、喫煙席を縮小、多くは全面禁煙にしていきました。

JALとANAが全面禁煙にできたのは、先進国で最も遅れ、1999年です。それも、国際民間航空機関(ICAO)の勧告を受けてやっと実現したのでした。国際機関から勧告を受けない日本の新幹線には、今でも喫煙車両が残っています」

では、機内で飲酒して大騒ぎしたり、機長らの指示に従わなかった場合はどうなる?

「降機させられますが、問題は引き渡された後です。今回の台湾では『民用航空法』があり、119条の2では、トイレでの喫煙には、3万元(約11万円)以上15万元(約57万円)の罰金、機長の指示に従わない場合や、酒類を飲んで機上の秩序を乱した場合、あるいは、トイレ以外の場所での喫煙は、1万元(約3万円)以上5万元(約19万円)の罰金となります。

これが日本だと、改正航空法(2004年1月)によるのですが、トイレの喫煙については、機長が反復、継続して禁止命令を出し、それに従わない場合には、50万円以下の罰金を科されます。

また、客席での喫煙を含め、機内の秩序や規律の維持に支障を及ぼす、あるいは、そのおそれのある行為は、職務の執行を妨げることを前提に、かつ、機長が反復、継続して禁止命令を出して従わない場合に限り、同じく50万円以下の罰金を科されます。

台湾だと、喫煙は、それだけで罰金の対象となります。日本は、機長が『反復、継続して禁止命令を出して従わない場合』とか、トイレ以外の喫煙については、更に要件を付け加え、『職務の執行を妨げる場合』に限られるなど、要件が厳重です」

もし、違反行為によって飛行機が空港に引き返し、他の乗客に影響が出た場合、賠償責任を問われる可能性は?

「民事の損害賠償も発生します。中華航空は、今回のケースにつき、彼等に燃料代、ダイヤ調整コストなどの損害を請求する、また、乗拒拒否となるブラックリストへ搭載するとも発表しています。当然のことでしょう。他の乗客から、遅延による損害賠償が出ることもあり得ます。

日本は『甘え社会』です。日本人の甘えは、子供が親に抱く甘えが、大人になっても残っているものです。この点は、精神科医の土居健郎氏が、ロングセラーの『甘えの構造』でつとに指摘しているとおりです。今回はそんな日本人のおごりと甘えが出た、後味の悪い事件ではないでしょうか」

【取材協力弁護士】
金子 博人(かねこ・ひろひと)弁護士

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