金完燮                        
 死亡当時、すべての朝鮮人にとって呪いの対象だった閔妃が、今になって自主独立の殉教者として華麗に復活した現象は、韓国人が直面しているアイデンティティーの混乱を端的に示すものだ。
韓国人が朝鮮王朝を慕い、日本の統治を受けず朝鮮王朝が継続したならもっと今日良くなっていると考えるのは、当時の朝鮮の実態についてきちんと分かっていないためだ。
特に子供と青少年は、きれいな道ときれいな家、整った身なり、上品な言葉遣いのテレビの歴史ドラマを観ながら、朝鮮もそれなりに立派な社会で、外勢の侵略がなかったならば静かで平和な国家を保てたろうと錯覚する。
しかし日本が来る前の朝鮮は、あまりに未開で悲惨だったという事実を知らねばならない。朝鮮は典型的な奴婢社会であった。全人口の30パーセント以上が奴婢であり、首都漢城の場合は人口の70%以上にも及んだ。
奴隷は物のように売買され、主人のために生涯奉仕しなければならなかった。

・・・ ある学者はこのような朝鮮を、20%のヒルが残りの80%の血を吸う社会構造だと喩えた。朝鮮は当時、世界中で最も未開で残酷な社会であり、
このような社会が自力で改革を行って近代化するということは到底考えられなかった。だから、日本が朝鮮に進出しなかったら、
朝鮮は文明の恩恵を受けられないまま世界で一番遅れた地域として残ったことだろう。したがって、今日韓国がある程度、民主主義の実現と経済開発に成功し、他の開発途上国から羨望される水準に発展したことは、
全面的に、朝鮮のために働いた日本人のお陰である。 当時の朝鮮人はこのような事実を熟知していたために、独立以降も朝鮮王朝に対しては何の郷愁も恋しさも持たなかった。
だから今日朝鮮の王室を再建することによって自分たちのアイデンティティーを獲得しようとする一部の韓国人の試みは、まったくもって間違ったことなのである。