限られた時間なので、そこまで話す余裕がなかったのかもしれません。ただ、「戦前、日本人が持っていた思想を取り戻そう」「それが、日本の安全保障に繋がる」というだけでは、そこにスローガン以上の意味はない気がしました。――

なぜ、海幹校は、吉木誉絵を〈客員研究員〉として招聘したのだろうか。われわれは、当事者たちに直接、尋ねることにした。

〈吉木誉絵事務所〉に質問状を送るために、その所在を調べると、同事務所は、ライトノベルの編集やファッション誌の広告営業を手掛ける編集プロダクション内に設けられていた。

半ば公的な海上自衛隊の幹部学校〈客員研究員〉をめぐる〈質問状〉について、吉木のマネジャー、S氏は「質問への回答でギャランティは出ますか」と応えた。

ギャランティは出ないことを説明し、質問状を送った。

以下のリストが質問内容だ(以下、敬称を略した概要)。

どのような経緯で、海上自衛隊・幹部学校の〈客員研究員〉になったのか。

(吉木は)自らを〈研究者〉であると考えるか。

(吉木が)客員研究員として大切にしていた〈理念〉はなにか。

回答は「答えない」だった。

続けて、S氏から「質問の内容については、海上自衛隊に問い合わせて下さい」といわれた。吉木は「自らを〈研究者〉であると考えるかどうか」という質問にさえ、答えられないのだろうか。

われわれは、防衛省にも質問を投げかけた(以下、敬称を略した概要)。

吉木誉絵を海上自衛隊・幹部学校の〈客員研究員〉に招聘したプロセス、選考理由について知りたい。

「客員研究員の選定は〈他薦〉で、他薦された客員研究員希望者の中から、幹部学校で検討し、受け入れを決定します』

これは、防衛省海上幕僚監部広報室による回答だ。では、吉木に決定した理由は何なのだろうか。

「吉木氏の〈情報発信力〉および研究実績から、幹部学校の研究分野での波及効果が見込まれると考えています」