日本との相互主義を目指した参政権付与

 金大中政権下の韓国では、日本で膠着化する権利獲得運動を応援するため、まずは韓国国内の外国人に地方参政権を与えたうえで日本政府に同等の待遇を要求するという、相互主義の論理のもと参政権付与に向けた準備が進められた。

 しかし、実現にいたるプロセスは難航した。2001年に韓国国会へ選挙法改正案が提出されたものの、韓国の憲法第1条にある「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から出る」という規定に背くという理由で、一度は廃案になったのだ。

 それでも外国人参政権付与をめざす動きは根気強く推し進められた。「地方選挙は“国民”ではなく“住民”が参加するもの」として憲法第1条への抵触を回避。経済協力開発機構(OECD)加盟国の多くが外国人の地方選挙における投票権を認めていることも後押しとなり、盧武鉉政権下の2005年6月、ついに「永住外国人に対する外国人地方参政権付与法案」が可決された。

 一方、日本国内の在日コリアンに地方参政権を付与する動きは、「日本国内の在日韓国人の人口の方が(韓国の日本人数より)多すぎる」という非対称性もあり、現在に至るまで進展していない。

厳しい永住権の資格取得基準

 韓国における外国人参政権は、地方議会議員及び地方自治体の長の選挙権のみ付与され、「被選挙権」、「大統領や国会議員の国政選挙の選挙権」、「政党活動や政治献金などの政治活動」は認められていない。対象は永住権を取得してから満3年が過ぎた19歳以上の外国人に限られる。

 「永住」資格の取得条件は色々あるが、以下の3つの要件をすべて満たしていることなど、かなり厳しい条件が課されている。

○韓国人の一人当たり国民総所得の4倍の年間所得6500万ウォン以上の所得がある
○7年以上滞在して居住資格(F-2)を獲得した後、さらに5年滞在している
○韓国人の1人当り国民所得以上の収入がある

 上記以外の条件としては、一定数の韓国人を雇用し、韓国で3年以上滞在している投資家や博士学位取得者などのいわゆる「高度人材」や、2年以上滞在している永住者の家族などがある。近年、永住権を取得できる条件は拡大傾向にあるが、その対象となっているのは韓国(朝鮮)にルーツのある外国国籍の同胞と、韓国にとって受入れメリットの大きい能力や資力を有する外国人である。

 このため、初めて外国人に選挙権が付与された2006年5月の第4回韓国統一地方選挙で実際に選挙権を得たのは、登録外国人約64万人のうち、わずか1%程度の6726人だった(そのほとんどは台湾出身の在韓華僑だった)。

 今では台湾華僑は全外国人有権者数の1割程度であり、韓国系中国人や投資活動をおこなう中国人が80%以上を占めている。また、2004年に制定された「住民投票法」により、地方自治体の住民投票権と、住民投票請求権も付与されている。