しかし対北朝鮮消息筋は「北朝鮮の現地事情を調べてみると、北朝鮮当局が昨年から高熱量石炭の生産を全面中断した」と打ち明けた。国連安全保障理事会が昨年9月に対北朝鮮制裁決議案2375号を通じ石炭の輸出入を全面禁止したためだ。これに伴いこれまで制限的、慣行的に行われていた石炭の流通は完全に立ちゆかなくなった。だが北朝鮮当局は輸出の道が閉ざされたからと質の良い石炭を住民には供給しなかった。峨山(アサン)政策研究院のシン・ボンチョル統一安保センター長は「昨年国連決議案2375号が出されてから国際社会が(北朝鮮の石炭輸出などを)厳格に監視している。昨年末に一部密輸の試みがあったが、いまは現実的に石炭を違法に秘密裏に輸出しにくい」と分析した。

これと合わせ食糧需給にも赤信号が灯ったという分析も出てきた。3月中旬に中朝国境地域を訪れた対北朝鮮消息筋は、「金正恩(キム・ジョンウン)が3月26日に中国を訪問した理由は対北朝鮮制裁解除のため。習近平中国国家主席に肥料供給を催促した」と話した。国連食糧農業機関(FAO)が10日に公開した世界食糧農業情報早期警報(GIEWS)報告書によると、昨年の北朝鮮の肥料供給量は61万2000トンで前年同期より40%減少した。金正恩が足早に動いた理由だ。今年も肥料供給に支障が生じれば北朝鮮の食糧生産に大きな影響が予想される。

北朝鮮が90年代に食糧難に陥った理由のひとつも肥料供給不足にある。北朝鮮はその後2・8ビナロン連合企業所、興南肥料連合企業所、南興青年化学連合企業所などで肥料を生産し、不足分は中国から支援された物資で充当した。北朝鮮は90年代以降継続して韓国政府に肥料支援を要求したが、肥料供給に余裕ができてからは肥料支援を拒否し他の物品支援を要求したりもした。しかし中国が対北朝鮮制裁強化次元から肥料供給を中断すると、昨年から影響が再び現れた。慶南大学のキム・グンシク教授は「北朝鮮の土壌は荒廃した状態で肥料供給が減れば食糧生産量は大幅に減少する。肥料供給に支障が出れば来年春には深刻な食糧難になりかねない」と分析した。

さらに北朝鮮の食糧生産量はすでに減少していることが明らかになった。FAO報告書によると、2018糧穀年度(2017年11月〜2018年10月)の北朝鮮の穀物生産量は精白前基準で548万トンで、前年度生産量より5%減少した。昨年秋に収穫したコメとトウモロコシなど主要作物と今年6月に収穫した小麦、麦、ジャガイモなど二毛作作物が含まれる。実際に消費される食糧は精白後で440万トン程度だが100万トン以上不足する。北朝鮮の人口を考慮すれば約560万〜650万トンの食糧が必要だ。経済難が深刻だった「苦難の行軍」当時の食糧生産量は280万トン水準だった。しかし金正恩訪中後に中国が北朝鮮の要請を受け入れて肥料を供給したのかは確認されていない。

最近金正恩委員長が現地指導で幹部を公開的に叱責する姿が何回も明らかにされている。現地指導に出ると成果を確認し褒賞を出していた金委員長の以前の姿とは変わっているということだ。情報関係者は「最近の対北朝鮮制裁強化で経済成果が明確に減り金正恩が現場で敏感な反応を見せている」と分析した。