トランプは取引だ。『取引の技術(The Art of the Deal)』は彼の著書だ。彼の名声の土台となっている。しかしその評判はもつれた。6・12シンガポール米朝首脳会談の良くない成績のためだ。会談から1カ月が経過した。米国は委縮した。会談前までホワイトハウスは決然としていた。「談判、速戦即決、一括妥結」と言った。会談後、そのような語彙は押し流された。

ドナルド・トランプ大統領の勢いは折れた。彼が「七面鳥料理論」を取り出した時からだ。CVID(完全、検証可能、不可逆的な非核化)の圧力カードは蒸発した。彼は17日、「(北朝鮮非核化の)時間、速度制限はない。急がない」と述べた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の防御術は巧妙だった。康仁徳(カン・インドク)元統一部長官は18日、「トランプも何もできない。金正恩にだまされたということだ」と話した。小説家イ・ムンヨル氏の言葉は実感がわく。「トランプ大統領が取引の技術者だというので見守ったが、結局、手腕は信頼できず、不足した事業家と明らかになった」。

トランプは言い張る。「水面下で前向きなことが起こる、シンガポール合意文は美しい文書だ」。それは弁解と自画自賛だ。彼は「この9カ月間、核実験も、ロケット発射もなかった」と言った。しかし北朝鮮に核・ミサイル試験は必要ない。北朝鮮は昨年末、核武力を完成した。取引の技術は取引の包装術に変わったようだ。

若い領導者のイメージ変身は明確だ。彼は残酷な世襲独裁の視線から抜け出した。北朝鮮の核武装は国際的な公認を受けたということだ。マイク・ポンペオ米国務長官は3回目の平壌(ピョンヤン)訪問をした(6日)。彼は金正恩に会えなかった。「手ぶら」の帰国だった。それは北朝鮮の常套的な冷淡だ。「踏み倒し(welsher)」は取引術の重要な要素だ。

「北朝鮮は相手が楽観と幻滅・失望の間を行き来するよう交渉の過程を操作する。失望した相手は北朝鮮が次は協調的な姿勢で出てくるだろうというくだらない幻想が膨らむ(『北朝鮮の交渉戦略』)。その本の翻訳者はソン・スンジョン大田大教授(軍事学)だ。彼は「ポンペオ長官がそのような状況になったようだ」と話した。

北朝鮮の交渉術は不敗の神話だ。千英宇(チョン・ヨンウ)元外交安保首席秘書官は「米国は北朝鮮との交渉で勝ったことがない」と言った。神話は拡張した。非核化交渉は難航だ。金正恩の時刻表の中で動く。なぜこのようになったのか。なぜ米国の未熟さと挫折は繰り返されるのか。原因は「知彼知己」の不足だ。「敵を知って己を知れば百戦しても危うくない」。 『孫子兵法』のその一節は例外がない。
(中略)

トランプは韓国人の支援を受ける必要がある。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「韓半島運転手」との提携も活発でなければいけない。北朝鮮の取引手法に同じ民族の韓国人は慣れている。韓国は北朝鮮をよく知っている。

パク・ボギュン/中央日報コラムニスト

ソース:中央日報/中央日報日本語版<「トランプも何もできない…金正恩にだまされた」>
http://japanese.joins.com/article/339/243339.html