文在寅(ムン・ジェイン)大統領の健康不安説や北朝鮮支援疑惑などを取り上げたユーチューブ動画やネットでの書き込みなどに対し、警察が「フェイクニュース」として放送通信委員会に削除を要請していたことが分かった。これについて同委員会の諮問機関が「問題ない」との見方を示したことから「警察は大統領に無理な忖度(そんたく)をしている」との指摘が相次いでいる。

 放送通信委員会が20日に明らかにしたところによると、ソウル市、江原道、仁川市などの地方警察庁は先日、保守系のユーチューブ・チャンネル「シンの一手」「ケミ(あり)愛国放送」などに公開された八つの動画とネットでの書き込み8件の計16件について、「不確実な内容を事実のように捏造(ねつぞう)し、社会統合を阻害している」との理由で同委員会に削除を要請した。政府が「フェイクニュース取り締まり」の方針を公表したことを受け、警察は複数のサイトについてその内容を調べてきたようだ。

 警察が削除要請を行った動画の中には、例えば文大統領が訪米期間中に国名を「大韓米国」などと誤って記載したことや、旅客船「セウォル号」沈没事故犠牲者のための焼香所芳名録に「申し訳なく、ありがたい」と書き込んだことなどを理由に「文大統領は認知症」などと主張するものがあった。さらに「北朝鮮が南北の国民年金統合を要求した」だとか「京畿道高陽市のオイルタンク火災は北朝鮮に送る石油を隠すため」など、南北関係に関する内容や政権与党を批判する内容も複数あった。

その中で全羅北道警察庁は「地上波テレビ局掌握文書が出た」というタイトルのユーチューブ動画の削除を要請し、大邱警察庁は「朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領は散歩もせず食事も残して蟄居(ちっきょ)している」との記事を問題視するなど、全国の警察庁が先を争うようにフェイクニュースの取り締まりに乗り出している。地方警察庁別では江原警察庁からの削除要請が6件と最も多かった。

 放送通信委員会は16日、これらの案件と一般からの削除要請7件の計23件について、外部の専門家などが加わった通信・権益特別委員会に諮問した。特別委員会は「表現の自由を巡る国民の基本権保護のためには、現存し明確な危険が認められない限り、フェイクニュースなどに対する国家機関による審議は最低限にするのが妥当」とした上で、出席した委員全員の合意で「問題なし」との結論を出した。社会の混乱に関する条項がそもそもあいまいで、また問題視された情報も「社会不安を引き起こすようなものではない」というのがその理由だ。

 放送通信委員会のある幹部によると、政治的な立場の違いなど、事務局で判断が難しい場合は特別委員会に諮問できるが、その結果に法的拘束力はないという。また早ければ来週中に開催される通信小委員会での正式な審査で最終的な結論が出される見通しのようだ。

イ・ヘイン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/11/21/2018112180010.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2018/11/21 09:44