昨年9月、南太平洋の島国ナウルで「太平洋諸島フォーラム首脳会議」が開かれた。18カ国の首脳が集まった。そこで突然中国の次官クラスの外交官が一言発言したいと割り込んできた。ナウルの大統領が発言機会を与えなかったところ、中国の代表団全員が席を立って、会議場を後にした。どうせ中国人観光客に依存する小国の会議だと無視したのだ。ナウルの大統領は「一介の官僚が大国から来たという理由で首脳を脅迫しようとした」と非難した。人口1万人の国の大統領だが言うべきことを言った。

 習近平国家主席が政権を掌握して以降、中国は過去の「朝貢外交」に回帰している。ある環境会議で北欧国家が中国の粒子状物質による大気汚染問題を指摘した。すると、中国代表は「国全体の人口が北京市の4分の1にすぎない国の発言だ」と皮肉った。中国に沈黙し続ければ、やられっ放しになる。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は「中国」が大好きだ。「毛沢東の中国共産党」が好きだという方が正確だろう。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が最も尊敬する人物が毛沢東だったという。文大統領はおととし訪中した際、習近平主席に外交の場ではありえないような冷遇を受けた。露骨に無視されたのだ。文大統領はそれでも何も言わなかった。むしろ文大統領は韓国のことを「小国」と呼んだ。人口5000万人を超える国で1人当たりの所得が3万ドルを超える国は世界で韓国を含め、米国、英国、フランス、日本など7カ国しかないのにだ。韓国は決して小国とは言えない。

 文大統領はこのほど、粒子状物質による過去最悪の大気汚染問題に関連し、「中国から飛来する粒子状物質の影響を最小化するため、中国政府と協議し、緊急対策を立てるように」と指示した。「中国になぜ一言も発せないのか」という国民の憤りを受けて下した指示だ。すると、中国外務省報道官は数時間後、「韓国の粒子状物質が中国から飛来したという主張に十分な根拠があるのか分からない」と発言した。韓国の大統領による公式な言及に局長級にすぎない中国の官僚が「根拠」を云々する。万一日本がそう言ったならば、文大統領と韓国政府はどう反応しただろうか。文大統領は今回も黙っていた。日本は35年間韓国を苦しめたが、中国は2000年にわたり韓国を侵略し踏みにじった。

 習主席は文大統領が送った特使を二度も下座に座らせた。香港・マカオの行政長官や地方の共産党委書紀が習主席に報告を行う際の席だった。中国外相が会議場で文大統領の腕をこつこつとたたいたこともある。それでも構わないのだとすれば言葉が出ない。

アン・ヨンヒョン論説委員

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/03/10 05:03