北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が、仮想通貨強奪に力を入れている。国際社会による制裁で深刻な外貨不足に陥るなか、2017〜18年に、仮想通貨交換業者へのサイバー攻撃で、5億7000万ドル(約630億円)超の被害を出したとの報告もある。2月の米朝首脳会談決裂を受けて制裁が維持されるため、不法活動の活発化が懸念される。

「ハッキングは明らかに、金正恩政権に重要な収入源をもたらしている。国際社会の厳しい制裁が、外部から北朝鮮に正当な資金を持ち込むことを困難にしているからだ」

 米経済誌「フォーブス」(電子版)は11日、北朝鮮によるサイバー攻撃の実態をこう指摘した。記事では、近く公表される国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書を引用し、17年1月から18年9月にかけ、北朝鮮のサイバー攻撃によって仮想通貨交換業者に5億7000万ドル以上の損失が出たという。

 北朝鮮政府が関係するハッカー集団としては、「ラザルス」などの存在が知られている。これらの組織は工作機関「偵察総局」の傘下にあるとされている。

 日本の仮想通貨取引所「コインチェック」から昨年1月、580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した事件でも、北朝鮮の関与が疑われている。

 国際社会の制裁を受け、北朝鮮では食糧不足にまで陥り、国連に支援を要請する非常事態となっている。韓国紙、中央日報(日本語版)は11日、北朝鮮の保有外貨が早ければ年内になくなるという見方が米国の一部で出ていると報じた。

 正恩氏は先月末、ドナルド・トランプ米大統領との首脳会談に臨んだが、「核・ミサイル」の完全放棄に応じなかったため、何の見返りも得られなかった。北朝鮮が最近、ミサイル発射場の再建を進めているとの分析もある。国民を飢えさせ、他国から仮想通貨を奪い、「核・ミサイル」開発を強行するなど、許されない。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190312/soc1903120013-n1.html
夕刊フジ 2019.3.12