● 期待できない 本当の意味での関係改善

 このように考えると、韓国は国内の厳しい反日世論と、日本との関係にいかに折り合いをつけるかという問題に直面している。

 徐々に韓国政府は、自国の要求が日本の“我慢の限界”を超えてしまったことを察知し、危機感を持ち始めてはいる。

 ただ、韓国政府がその危機感を根本から解決するためには、反日感情を高める世論をなだめる必要がある。その上で、韓国政府は対日関係の修復が自国に重要であることを、世論に納得させなければならない。

 だが、いまの文政権がその取り組みを進めることは難しい。

 現実的に考えると、文大統領は日本との関係よりも、世論への配慮を優先せざるを得ないだろう。過去、韓国の政治家は世論に迎合せざるを得なかった。それができないと、政治家生命が絶たれてしまう恐れがあるからだ。

 結果的に、韓国の政治家は、世論の求める方向に動かざるを得なかったのである。

 韓国の市民団体などは、元徴用工問題に関する追加訴訟を準備し始めた。世論の反日感情は増している。文大統領が世論をどのようになだめることができるか、有効かつ現実的な方策は見当たらない。また、韓国世論も許容できないはずだ。文大統領の支持率は、就任後最低の水準に落ち込んでいる。結局、怒る世論に一段と迎合せざるを得ないだろう。

 ということは、「本当の意味」で韓国が、日本との関係改善を重視し、目指していると考えることは難しい。ここでいう「本当の意味」とは、韓国が国家間の最終的かつ不可逆的合意を順守するということだ。それは、韓国が政治と経済を安定させ、長期の視点で政策を進めるために必要だ。

 しかし、政府が求めに応じないということそのものが、韓国の世論には受け入れられない。世論にとってその状況は、大統領が人々の要求に耳をふさいでいることと映るだろう。

 そう考えると、今後、日韓関係が一段と冷え込む可能性が高いといえる。