韓国経済の失速に歯止めがかからない。今年1〜3月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比0・3%減とマイナス成長に転落、2008年のリーマン・ショック時以降で最低の水準となった。企業業績も総崩れで雇用も悪化が続く。この期に及んで日本政府や企業に救いを求める文在寅(ムン・ジェイン)大統領だが、いわゆる「元徴用工訴訟」の異常判決など日本側の不信感は極まっており、取り返しはつかない。

 マイナス成長は、設備投資が前期から10・8%減少し、輸出が2・6%減となったことが主な要因だ。聯合ニュースは、韓国銀行(中央銀行)関係者の話として、「半導体市場の不振、現代(ヒュンダイ)自動車の労使協約遅延に伴う供給支障も影響を与えた」と報じた。

 この経済失速を「文政権の通信簿のようなもの。5段階評価でいうと『2』ぐらいだろう」と語るのは、韓国情勢に詳しいジャーナリストの室谷克実氏。

 落第点を取った背景について「文政権のアンチ自由化政策によって企業家たちの心理が萎縮している現状を反映している。半導体の不調など外部要因もなくはないが、やはり国内の要因が大きい。景気の先行きを反映する設備投資も低調だ」と分析する。

 リーマン・ショックが直撃した08年10〜12月期(3・3%減)以降で最低の数字となったが、今回は世界的な金融危機は起きていない。それだけに、文政権が直面している事態はより深刻ともいえる。

 にもかかわらず、朝鮮日報によると、韓国大統領府(青瓦台)の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官は「外部の経済的要因が最大の原因として挙げられるのではないか」と経済失政を認めようとしない。それどころか、青瓦台に「良い指標を周知するためのタスクフォース」を設置するというから、成績を上げようとせずに、通信簿の項目を変えようとしているようなものだ。

 企業業績も低調だ。半導体大手、SKハイニックスの1〜3月期の連結業績は、営業利益が前年同期比68%減だった。最大手のサムスン電子も営業利益が1〜3月期の営業利益が60%減と、韓国経済の牽引役となるべきハイテク業界が大幅減益ショックに見舞われた。鉄鋼大手ポスコも1〜3月期の営業利益が19%減となっている。

 大手企業の変調は韓国国内の雇用に一段の打撃となっている。サムスンに次ぐ電機大手のLG電子がスマートフォンの韓国国内での生産を終了し、生産拠点をベトナムに移すと報じられた。

 ハイテクと並ぶ主力の自動車産業も厳しい。韓国統計庁によると、昨年10月時点の自動車・トレーラー製造業の就業者数は49万6000人と前年の同時期から4万1000人減った。現在の方式で集計し始めて以降初めての減少とされ、韓国メディアは「過去最悪」と報じた。

 国内投資が落ち込むなか、外国からの投資を求めるのは自然の流れだが、ここで文政権の「反日」政策など外交の失敗が自らの足を引っ張っている。

 文氏は先月28日、大統領就任後初めて、日系を含む外資系企業の経営者を招いた懇談会を開いた。日本企業関係者には「経済的な交流と政治は別に捉えるべきだ」と述べて韓国への投資を訴えたという。

 だが、韓国がいわゆる「元徴用工」の訴訟で日本企業にとって理不尽な判決を次々と出すなど、日本企業には韓国進出のリスクが身にしみている。前出の室谷氏は、「懇談会というよりも演説会のようなもので、大統領自身、経済が『堅調』という認識を変えていない。冷え込んでいるのは日韓の外交関係だけではなく、諸外国も韓国を良く思っていないのが実情で、日本を含め、積極的に投資に打って出るとは考えにくい」と悲観的だ。

 今月23日の日韓外務省局長協議では、韓国の金容吉(キム・ヨンギル)東北アジア局長が、6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせ、安倍晋三首相と文大統領の首脳会談を提案。しかし、日本側は「首脳会合の議長を務める首相の時間的余裕は限られている」と消極的な姿勢を示した。

 韓国側には、経済の冷え込みを受け、早期に日韓関係を正常化すべきだとする経済界の意向があるようだが、元徴用工訴訟問題に加え、日本産食品の禁輸措置を続けるままで日本が受けるわけもない。

 韓国ギャラップ社が26日発表した文大統領の支持率は前週比4ポイント下落の44%、不支持率は5ポイント上昇の47%となった。

 「GDPの結果が、文政権にとってマイナスに働いていることは間違いない」と室谷氏。韓国経済も文政権も、浮揚する材料が見当たらない。

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夕方フジ 2019.4.28