北朝鮮は4日に短距離弾道ミサイル2発と300ミリ新型放射砲などを発射した。北朝鮮による今回のミサイル発射は18カ月ぶりで、北朝鮮に対して「弾道ミサイル技術を利用した全ての発射」を禁じた国連安保理決議にも当然違反している。北朝鮮はしばらく軍事挑発を自制していたが、今回これを再開した意図は誰がみても明らかだ。「非核化の意志」を宣伝し制裁解除を手にしようとした計画が、ベトナムで行われた2回目の米朝首脳会談で思い通りにならないことがわかると、再び軍事的緊張を高めて米国に圧力を加えようとしているのだ。米国のトランプ大統領はツイッターで「金正恩(キム・ジョンウン)委員長は私との約束を破りたいとは思っていないだろう」と書き込んだが、その前に報告を受けた際には「金正恩は約束を破った」として激怒したとも伝えられている。

 今回のミサイル発射は「地上・海上・空中など全ての空間で相手に対する一切の敵対行為を中止する」と定められた南北軍事合意にも反している。韓国軍はこの合意を守るためとして軍事境界線周辺での空からの偵察をやめ、西海(黄海)の5つの島を守るのに必要な砲撃訓練も中断している。ところが北朝鮮は今回、ソウルなど首都圏を直接攻撃できる射程距離70−240キロのミサイルと放射砲を発射した。韓国軍は防衛訓練を中断したにもかかわらず、相手は堂々と攻撃訓練を行ったのだ。最近の韓半島(朝鮮半島)情勢について海外の専門家は「金正恩氏は文在寅(ムン・ジェイン)大統領の顔に唾を吐き、使い古したタイルのように捨ててしまった」と評しているが、今回の軍事挑発はそれ以上のものだ。

それでも韓国政府は「北朝鮮が発射したのはミサイルではない」として相変わらず北朝鮮を擁護している。合同参謀本部は当初「短距離ミサイル」と発表したが、それから40分後には「発射体」へと言葉を変えた。大統領府で行われた緊急会議の後、国家情報院は国会に「高度や距離などから考えるとミサイルではない」と説明したという。与党・共に民主党の報道官は「韓米の軍事当局は今回の発射体を弾道ミサイルではなく放射砲あるいは戦術ロケットと推定している。その場合、安保理決議違反にはならない」と主張した。

 北朝鮮が5日に火を噴いて飛ぶミサイルの映像をこれみよがしに公表した後も、韓国軍は「北朝鮮の発射体は新型の戦術誘導武器」として最後までミサイルという言葉を使わなかった。北朝鮮自ら「我々はミサイルを発射した」と主張しているにもかかわらず、韓国政府は「詳しい分析を行っている」としかコメントしない。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮政策が破綻した現実を受け入れたくないからだろう。北朝鮮のミサイル発射を否定したいが故に、頭を砂の中に埋めて目の前で起こっている様子を見ようとしないのだ。

 韓国軍の防衛体制を自ら崩壊させ、訓練を中断することで平和を手にするという構想は、あまりにも危険な錯覚であることが今回改めて確認された。今こそ文大統領は韓国軍に「武装体制を再整備せよ」と命令を下すべきだが、実際は挑発に乗りだした金正恩氏の方が現場で「強力な力によってのみ平和と安全が保障されることを忘れるな」と指示した。これほどの主客転倒が他にあるだろうか。

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/05/06 09:31