【台北=伊原健作】台湾の蔡英文総統が10日に記者会見し、米中貿易戦争で台湾企業が中国から地元に生産拠点を戻す流れが強まり、今年受け付けた台湾への投資案の累計金額が2500億台湾ドル(約8800億円)を超えたと明らかにした。米は同日、対中制裁関税の引き上げを発動したが、中国からの企業の移転やサプライチェーン(供給網)の再編が加速しそうだ。

蔡氏は米の対中関税引き上げに伴い台北市の総統府で記者会見し「世界の経済・金融に衝撃となる」と警戒感をにじませた。一方で「今年は台湾投資が大爆発する年になる」とも指摘。中国生産を得意とする台湾企業が、米中貿易戦争のリスクを回避するため、台湾生産の拡大に向けた投資を加速していると強調した。

経済の「脱・中国依存」を目指す蔡政権は、中国から台湾企業を引き戻すため、年初から土地取得や外国人労働者の雇用規制の緩和などの優遇策を打ち出した。制度の対象となる投資案の累計金額は既に今年の目標だった2500億台湾ドルを超え「目標を5000億台湾ドルに引き上げた」(蔡氏)という。

台湾企業は日米欧に先駆けて中国で生産網を構築し、米など世界市場に製品を送り出してきた。ただ直近では鴻海(ホンハイ)精密工業や台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)など大手電子機器メーカーが、制裁関税の対象となった通信機器などの生産を中国から台湾に移す動きを活発化させている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44624300Q9A510C1FF8000/
日本経済新聞 2019/5/10 16:16

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台湾の蔡英文総統(4月、台北市内の総統府)