ネトウヨやパヨクは、これまで承認欲求をなかなか満たすことができない人たちだった。しかし、インターネットの普及によって、それが可能になったのだ。

〈現実社会では無力に近かった対話不能な人たちは、ネット上では手が付けられない存在になっています。どれほど彼らが厄介なのか、ここまでの内容を振り返りたいと思います。

まず、彼らが及ぼす影響力は甚大です。極端に乏しい論理しか持たない、いわば断言のような主張がネット上で幾度となく反復されることで、人々の間にその断言が感染していきます。断言の反復は、カルト宗教の内幕としてよく見られる洗脳システムを思い起こさせます。「説得力のない言葉だから説得できる」という奇々怪々な現象が起きているわけです〉

と物江氏は指摘する。偏狭なイデオロギー(行動に影響を与える思想)と自己絶対化の罠にとらえられたネトウヨやパヨクは、カルト宗教の信者と見た方がいい。

それでは、どのようにしたら、ネトウヨやパヨクが持つ偏狭なイデオロギーを脱構築することができるのだろうか。物江氏は、議論に対して、3つのルールを確立する必要があると考える。

〈一つ目が、「自らの主張は仮説にすぎないと確信すること」です。言い換えれば、自分の主張は間違っているかもしれないと、強く疑うことです〉。

この場合、仮説は、他者によって反証することが可能な形態で提示されなくてはならない。しかし、ネトウヨやパヨクが展開する言説は「これが真実だ」という信念の吐露で、反証可能な命題ではない。

〈二つ目が、「人の発言権を奪わないこと」です〉。

対話的理性が機能している状況では、他者の発言権が当然、保障される。しかし、特定の信条への賛同をネトウヨやパヨクは求めているので、当初から自分の見解と対立する他者の発言権を認めるという気構えがない。

〈三つ目が、「どれほど奇妙奇天烈に思える主張でも、理由付け(論拠)や事実で、その良し悪しを判定すること」です。どれほどおかしく思える主張でも、その内容を検討せずに否定するのは根拠なきレッテル貼りと同じです〉。

この原則も、根拠なきレッテル貼りを行動原理とするネトウヨやパヨクには通用しないと思う。

しかし、この3原則にしかネトウヨやパヨクが社会に与えている悪影響をミニマム化する方策はないと評者も考える。小学校高学年から中学生、高校生、大学生など、インターネット空間に流布される情報で世界観を形成する途上にある人々に対して、この3原則を重視しなくては、あなた自身のキャリアが伸びないし、日本社会も強化されないということをていねいに教えるのだ。

偏狭なイデオロギーを脱構築するための方法論を、教育に従事する専門家が協働して構築することが焦眉の課題と思う。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65694?page=2