死刑復活に賛否拮抗 世論調査は54%が反対

ドゥテルテ大統領は22日の施政方針演説で、死刑制度の復活を議会に求めたが、キリスト教徒が9割を占めるフィリピンでは教会関係者を中心に反対の世論も根強く、上下両院で法案が可決されるかどうかは不透明だ。

 死刑復活賛成派のソット上院議長は23日、上院内に復活反対の声があることを指摘した上で「大規模な麻薬密輸の罪に限定すればおそらく13〜14票(上院議員数24)でなんとか可決できるだろう」との見方を示した。上院では元国家警察長官だったラクソン、デラロサ両議員のほか、ドゥテルテ大統領に近いゴー議員、現役ボクサーのパッキャオ議員らにより死刑復活法案が提出されている。

 アニョ内務自治長官、ゲバラ司法長官も大統領の施政方針演説後、死刑による「犯罪抑止力」に期待を寄せる発言をしている。

 24日付の英字紙スターによると、上院ではこのほか、ビリヤール、トレンティーノ、レビリヤ、ピメンテル、マルコス、ラピド、ガチャリアン、カエタノの8上院議員が賛成する見通しという。

 一方、上院司法人権委員長のゴードン議員(無所属)、ポー議員(同)らは死刑の犯罪抑止力に疑義を示すなど復活反対派だ。

 与党院内総務でもあるズビリ議員(PDPラバン)も、24日、比テレビ局ANCで「(賛成派と反対派の数は)上院でほぼ同じ。大統領の考えは尊重するが、すべての命に価値があると思っている」と復活への複雑な心境を語っている。

 カトリック司教協議会(CBCP)は23日の声明で上下両院議員に対し「極刑復活には慎重であるべきだ」と呼び掛けた。

 民間調査機関の昨年10月発表の世論調査では死刑制度の復活を望む比人の声は30%にとどまり、54%が死刑制度に反対の意見を示している。

 比は1987年にアジアで初めて死刑制度を廃止したが、ラモス政権が93年に犯罪抑制を理由に復活させた。その後、再びアロヨ政権下の06年に停止された。(森永亨)

http://www.manila-shimbun.com/category/politics/news246093.html
まにら新聞 2019.7.25