今年4月、10年ぶりに名護屋城博物館に赴任した。日韓関係悪化の中でも、通常通り運営できている。
 2008年7月、「竹島問題」をきっかけに日韓関係が急速に悪化し、名護屋城博物館が支援していた草の根交流も次々と中断したことがあった。その際は、8月下旬ごろには関係改善に向かったが、今回の日韓関係の悪化は先が見えない。徴用工判決、レーダー照射、輸出管理厳格化、GSOMIA破棄など、歴史問題から経済・安全保障問題へと摩擦が拡大している。

 韓国での日本製品不買・渡航自粛運動は韓国の小売業界、九州の観光業界を苦しめている。日本のテレビではインバウンドはこの機会に韓国依存から脱却すべきだと主張するコメンテーターもいるが、これは東京からの一面的な見方だ。北部九州から見れば、韓国は東京よりも大阪よりもずっと近い所。日韓の地域間交流と相互努力が現在の頻繁な人の往来を支えてきた。

 国と国との間で戦争や紛争になれば、異常な精神状態の中で大量殺戮(さつりく)や非人道的な行為が起こることは、歴史が証明している。そこまではいかずとも今回のような摩擦が起きれば、文化交流や経済活動に大きな支障が出る。犠牲になり苦しむのは、国を問わず、時代を問わず、いつも民衆一人一人なのだ。

 エスノセントリズム(自民族中心主義)からは、相手に対する敬意は生まれない。歴史を真摯しんしに見直し、積み重ねてきた関係を大事することからしか道は開けないのではないか。

 一刻も早く日韓関係が改善することを願うばかりだ。

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