【台北=伊原健作】2020年1月に迫る台湾の総統選を巡り、南部の高雄市内で21日、対中融和路線の最大野党・国民党候補である韓国瑜(ハン・グオユー)氏に対し、市長職の罷免を求める大規模デモが起きた。韓氏側も対抗して市内で大規模デモを実施した。総統選が近づくにつれ、緊張感が高まっている。

韓氏は昨年秋の統一地方選で高雄市長選に当選した。「韓流」と呼ばれるブームが全土に広がり国民党の大勝をもたらし、与党・民主進歩党(民進党)の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統を党主席からの引責辞任に追い込んだ。

ただ、今回の総統選出馬のため就任から1年もたたない10月から市長を休職している。庶民派を自認する一方で高級マンション投資などのスキャンダルも絶えず、市民から批判が出ていた。

罷免を求めるデモは民進党に近い市民団体などが呼びかけ、主催者発表では「50万人」規模が参加した。参加者は香港民主派が掲げる「光復香港」をモデルに「光復高雄」(高雄を取り戻せ)との標語を掲げ、「無能市長を罷免しろ」などと声を上げた。

主催団体は既に市長職の罷免投票の実施に必要な22万人超の署名を集め、近く手続きを開始する構えだ。ただ今回のデモは時間のかかる罷免の成否より、間近に迫った総統選で韓氏を落選させる狙いが色濃い。デモに参加した市内の会社員男性(24)は韓氏は「中国に近過ぎる」と指摘し、「台湾を守る総統選で勝たせるわけにいかない」と話した。

一方でこのデモの北方5キロメートルほどの路上では韓氏側が対抗して大規模なデモ行進を実施し、主催者発表で「35万人」規模が集まった。副総統候補の張善政氏が集会で「罷免しなければならないのは、人々を苦しめている蔡総統の方だ」と声を上げると、支持者から「そうだ!」との怒声が響いた。

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日本経済新聞 2019/12/22 16:24