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(略)

マスク不足に関する国民の不満を抑え込むべく、韓国政府は2月5日、マスクを大量に買い占めたり、売り惜しみをした業者を処罰する対策を打ち出した。違反した業者には禁固刑が科される可能性もある。さらには1千枚を超えるマスクを国外に搬出する場合には、正式な輸出手続きが必要となった。これ以上の国外持ち出しを防ぐためだ。文在寅政権に厳しい保守系の朝鮮日報は「過去の経験に学ばなかった」として、同じく深刻なマスク不足に陥った2015年のMERS=中東呼吸器症候群の例を引き合いに、後手に回る韓国政府の対応を批判している。

また、マスクパニックは文在寅政権の足元を揺るがせている。韓国政府は深刻な品薄を解消するため、マスクメーカーについては法律で定められた週52時間労働の対象外とすることにした。「大幅残業を認めますよ」という特例だ。(略)

しかし、これに猛反発したのが政権の支持基盤であったはずの労働組合だ。中でも「全国民主労働組合総連盟」(以下、民主労総)は、52時間労働制が有名無実化されることを懸念し、訴訟などの反対闘争を行うとしている。(中略)

中国は日本に「大感謝」・・・韓国メディアは恨み節

中国外務省の華春瑩報道局長は4日、ネット上での記者会見で、日本からの支援について「非常に感動した」と述べた。華局長は、日本からのSNS上での「中国がんばれ」のメッセージや日本政府と企業からの大量の支援物資、武漢を応援する意味での東京スカイツリーのライトアップなど、一つ一つ事例を挙げて賞賛した。実は会見では、韓国を含む複数の国からの支援に対しても謝意が示されているのだが、韓国メディアはその扱いが気に食わなかったようだ。紙面には「日本だけに対する“特別な感謝”とは表現の程度が違った」「チャーター便もマスク支援も日本より一歩遅れた」と、日本への嫉妬を滲ませるような表現で、日本よりも支援が遅れた政権を批判していた。

文政権としては、最大の貿易相手国である大国、中国との外交で日本に遅れを取ってはならないという焦りがあるはずだ。その焦りが表面化したともとれるのが、「病名」だ。韓国メディアは新型コロナウイルスによる疾患を「武漢肺炎」と表現してきたが、韓国大統領府は「新型コロナウイルス感染症という表現を使ってほしい」と要請した。中国側の感情を逆撫でしたくないという事だろう。こうした「忖度」とも取れる韓国政府の対応について、韓国メディアからは「中国への隷属」(中央日報)という皮肉まじりの批判が飛び交っている。

“やっぱり関わっていませんでした”政府立場を二転三転

マスクパニックの極めつけは、韓国政府の責任転嫁だ。1月末に実施した中国への大量のマスク支援について突如、「政府主導ではなく民間主導だ」と立場を翻したのだ。これはどういうことか。

韓国政府は1月28日、公式の報道資料を通じて「政府はマスクや防護服などの支援物資をチャーター機で中国に送る計画がある」と発表した。朝鮮日報によると、この発表と同時にマスクの価格が急騰。1枚の価格が12倍にまで跳ね上がったという。すると2日後の1月30日の報道資料には「官民が協力し、マスク200万枚、医療用マスク100万枚を中国に支援する」と記載された。支援の主体が、政府単独から“民間との共同”にすり替わったのだ。その後も極端な品薄が続くと、韓国保健福祉省は2月5日、「武漢に支援されたマスクは中国の留学生団体の自発的な募金活動で準備されたものだ」と説明。つまり、マスク不足による政府への不満が高まるのと並行して、支援の主体が「政府単独→官民共同→民間中心」へと移り変わっていったわけだ。現在は「政府はマスクの輸送だけを担った」という主張になっている。地元メディアはこの騒動の裏話として、留学生団体の関係者のコメントを伝えている。

「政府と輸送機について協議している時、韓国外務省が『民間ではなく官民協力と書いてもよいか』と言うのでそうしても良いと伝えた」(2月6日 朝鮮日報)

カラのチャーター機にマスクを積むだけで中国に大きな貸しを作れるとの狙いがあったのだろうが、中国への支援を強くアピールしておいて、マスク不足が深刻化すると「在韓中国人がやった事」と責任転嫁するのはいかがなものか。支援を受けた中国政府も戸惑う事だろう。「ろうそく民心」により誕生したと自負する文在寅政権だが、民心におもねるあまり、公式の立場を二転三転させれば混乱が生じ、結局は民心の離反を招く。マスクパニックはこうした文在寅政権の弱点を改めて浮き彫りにした形だ。

(執筆:FNNソウル支局 川崎健太)

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FNN PRIME 2020年2月7日 金曜 午後10:03