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■解析後「速やかに承認申請」

第3相臨床試験の主要評価項目は、体温、酸素飽和度、胸部画像所見の軽快、新型コロナが陰性化するまでの期間。具体的には、症状軽快後、48時間後に一定の間隔で2回のRT-PCR検査を実施し、2回とも陰性だった患者を抽出して、投与開始から1回目のRT-PCR検査で陰性が出るまでの期間をアビガン群とプラセボ群で比較する。副次評価項目は、有害事象と7ポイントスケールによる患者状態推移とする。

既に被験者の募集を行っている。目標症例数が現状の96例のまま変更がなければ、6月末にも第3相臨床試験が終了する見通し。富士フイルムは「データ解析後、速やかに国内で承認申請したい」(広報担当者)考えだ。

■新型コロナに効く可能性

アビガンは、日本で2014年3月、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症を効能・効果として承認された。ただし、既存の抗インフルエンザ薬には無い作用メカニズムを有していることや、動物実験の結果から催奇形性のリスクが懸念されることなどから「既存の抗インフルエンザ薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザ感染症の蔓延に備える医薬品」と位置付けられ、厚生労働相の要請がない限りは、製造などを行わないことなどの承認条件が課されている。なお、日本以外では、承認されている国・地域は無い。

アビガンの作用機序は、宿主(ヒト)の細胞でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代謝され、一本鎖マイナス鎖RNAウイルスであるインフルエンザウイルスの複製に関与するRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられている。加えて、これまでにさまざまな研究が実施され、インフルエンザウイルス以外にも、エボラ出血熱やマールブルグ病など複数の感染症へ有効性を示す可能性が示唆されてきた。

世界的に流行が広がっている新型コロナウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAウイルスだが、同ウイルスに対しても、アビガンがRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害するのではないかと期待され、中国や日本で複数の臨床試験や臨床研究、観察研究が実施されているところだ。

ただし、アビガンの物質特許は19年に失効しており、現在は製造特許だけが有効な状況。そのため、中国では中国企業が後発医薬品を製造・提供している。

終わり〆