■炎上恐れ、思考やめないで 政治アイドル・町田彩夏さん(24)

 主にツイッターで発信している。首相官邸の懇談会の写真がスーツ姿の男性ばかりだったので「いつのまに日本は『男子校』になってしまったんだろう」とツイートしたら、否定的なリプライ(返信)をもらった。
 ジェンダーやフェミニズムなど、SNSでは炎上しやすいテーマがあると感じている。例えば、ツイッター上では、ジェンダーについて発信する「モノ言う女性」に対する誹謗(ひぼう)中傷が目につく。内容に対して意見されるのではなく、見知らぬ人からいきなり容姿をののしられることもある。
 特定のテーマがたたかれ、炎上させられるプロセスを目の当たりにすると、その話題自体がアンタッチャブルになる。最終的に思考停止した社会となることが問題だ。言葉と知識で反論していくことが必要だと思う。
 一方、SNSは「私だけじゃない」と思わせてくれることがある。性被害に抗議する「#MeToo」や、パンプスの強制に異を唱えた「#KuToo」運動が象徴的。個人の悩みが社会運動になっていく点は、メリットと考える。

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 まちだ・あやか SNSで政治や社会問題について発信。大学院でジェンダー社会科学を専攻中。


 ■対立が多様化、市民同士も 憲法学者・曽我部真裕さん(45)

 2月にあった京都市長選では「大切な京都に共産党の市長は『NO』」と書かれた広告が紙面に載り、「ヘイト」と批判された。特定の民族や国籍の人たちを排除する、本来の意味でのヘイトスピーチとは違う。それでも、気に入らないものを差別だ、ヘイトだとたたくのが常套(じょうとう)手段になっている。
 「表現の自由は大事ですか?」と聞かれたら、みんな大事だと言うだろう。では性的な「萌(も)え絵」についてはどうだろうか。否定的な答えをする人が多いと思う。理解しておきたいのは、自分が不快なものであっても存在を認めるのが、表現の自由だということ。
 かつては為政側が表現の自由を規制してきた。しかし今は市民同士がそれぞれの価値観と違うものを認めない状況が見受けられるなど、対立構造は多様化している。
 表現の自由を掲げるメディアにも課題はある。その一つが実名報道。実名原則は否定しないが、被害者実名の説得的な理由が明示されているのか。こうした市民の疑問に、メディアは答えていく必要がある。


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 そがべ・まさひろ 京都大教授。専門は憲法、情報法。著書に「反論権と表現の自由」など。