【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)が域外からの直接投資を規制する動きを一段と強めている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済的打撃が深刻化する中、重要産業の買収機会をうかがう中国などへの警戒感が背景だ。

外資規制、医療製品も 海外勢の買収阻止―新型コロナ
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 「経済的な脆弱(ぜいじゃく)性は重要なインフラや技術の売却につながる」。欧州委員会のホーガン委員(通商担当)は4月の貿易相会合で、株価下落で割安になった企業が狙われる恐れがあると警告。各国に対応を急ぐよう訴えた。

 外資の動向に神経をとがらせる状況に拍車を掛けたのがコロナワクチン開発で有望なドイツのバイオ医薬品企業キュアバックをめぐる騒動だ。トランプ米政権が多額の資金提供の見返りにワクチン独占を画策したとの疑惑が3月に浮上。EUが直後に同社への8000万ユーロ(約92億円)の支援を決め、引き留めを図る事態につながった。

 特に懸念されるのが中国の国営企業。債務危機に陥ったギリシャの港湾施設買収などの例もあり、EUは近年警戒を強めてきた。
 欧州委は既に昨年、域外からの直接投資の審査に関し、加盟国間で情報共有し相互に監視し合うEUの新規則を導入した。さらに欧州委は3月、コロナ危機で「戦略産業への潜在的リスクが増している」とし、特に医療分野の審査厳格化を加盟国に促す指針も示した。

 一方、ドイツ政府は4月、EU規制に基づき外資規制強化の法令改正を承認。今後、医療も対象に加える。イタリアも買収制限強化を打ち出したほか、既に審査基準を厳格化したフランスも監視を強めている。
 また、競争政策を担う欧州委のベステアー上級副委員長が英紙フィナンシャル・タイムズで、買収防衛のため加盟国に出資を促すなど、EUは欧州産業保護の姿勢を鮮明にしている。

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時事ドットコム 2020年05月06日16時58分

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ブリュッセルで記者会見する欧州委員会のホーガン委員(通商担当)=2019年12月12日(EPA時事)