積極的な大量検査と接触者追跡で新型コロナウイルスの国内での感染を見事に食い止めていた韓国だが、
ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)にあるナイトクラブから集団感染が起きていたことがわかった。

ゲイバーを利用した男性から感染が広がったと報じられ、同性愛者に対する風当たりが強まっている。

このクラスターの最初の感染者は29歳の男性だ。韓国では4月30日から5月5日は連休となっていて、
この男性は5月2日に梨泰院の5つのナイトクラブとバーを訪れたとされる。6日になって検査で陽性と確認され、
調査の結果、客や家族など100人以上の感染が確認された(AP)。

シンガポールのストレーツ・タイムズ紙によれば、この男性は海外渡航もせず、過去に感染した人との接触もなかったという。
クラスターは複数のクラブにわたっており、感染者のなかには明らかに男性とのつながりがたどれない人もいるという。

梨泰院の51件のクラブのうち9件で感染が確認されている。多くの梨泰院のクラブは地下にあり換気が悪い。
入店者は踊り、酒を飲み、互いに近づいてマスクなしでおしゃべりをする、いわゆる3密になっていた。

韓国では感染者の減少を受け、5月6日から厳しいソーシャルディスタンシングのルールが緩和され始めたところだった。
APによれば、突然の感染者急増で、ソウルをはじめほとんどの都市では、ナイトクラブの一時閉鎖が命じられた。
予定されていた学校の再開も1週間延期されている。

韓国疾病予防管理センターの副センター長は、コミュニティのなかで静かに感染が広がっており、
ナイトクラブにたどり着いたところで感染が爆発したと見ている(ストレーツ・タイムズ紙)。

APも、当局は梨泰院内の地域感染は最初の男性が感染する前から始まっていたかもしれないとしていることから、
この男性がどのぐらい大きな役割を果たしたかは明らかではないとしている。

ところが、韓国紙の国民日報が、最初に感染した男性が訪れたクラブはゲイバーだったと報じたことから、
ソーシャルメディアには同性愛に対する中傷が大量に投稿された。男性とクラブを訪れた人々に対して、コロナとの闘いを危機に陥れるものだという非難もあったという。

性的少数者に対する韓国人の考え方は近年徐々に改善されているが、反同性愛の感情は保守的な国内では根深いとAPは述べている。

米CBSのインタビューに答えたゲイの男性は、ゲイバーが集団感染の中心地と見られるからといって、
すべてのゲイコミュニティの人々がソーシャルディスタンシングのアドバイスを無視しているわけではないと訴える。

感染が再拡大するなか、人々の苦しい気持ちはわかるが、多くのゲイ男性が自宅で自粛を続けていたことをわかってほしいとしている。
現在のところ、同性愛者へのヘイトクライムや暴力などは報告されていないが、性的少数者のコミュニティには不安と恐れが高まっているという。
https://newsphere.jp/national/20200513-3/