統一部、緊急記者会見開き脱北者2団体告発方針を発表

 韓国統一部が10日、北朝鮮向けビラを散布したり、米などを入れたペットボトルを送ったりした脱北者団体2団体を告発すると明らかにしたことをめぐり、「北朝鮮を意識して既存の法解釈を恣意(しい)的に変え、これを無理にさかのぼって適用した」と指摘する声が上がった。「北朝鮮が反発するたびに法解釈を変え、大韓民国国民である脱北者を締め付けようとしているのか」との批判もある。また、鉄道建設のため北朝鮮に装備を搬出し、国際機関を通じてコメ支援まで推進した政府が、ビラやペットボトル搬出にケチをつけるのは二律背反的であるだけでなく、拙劣だという言葉も出た。

■交易概念の「搬出」をビラに適用

 統一部当局者は同日、記者たちに会い、脱北者団体2団体を告発する方針を明らかにし、「北朝鮮向けビラは未承認の搬出品であるため」と説明した。「北朝鮮向け搬出物品は統一部長官の承認を受けなければならない」という南北交流協力法第13条に違反しているということだ。

 だが、この法律は「搬出・搬入」を「売買・交換・賃貸借・贈与・使用等を目的とする南北間の物品の移動」と規定している。不特定多数の北朝鮮住民の目や耳を開くためのビラ散布を阻止しようと、南北交易に適用される概念を無理やり持ち出してきたのだ。誠信女子大学のキム・ヨンホ教授は「北朝鮮向けビラは憲法上、表現の自由に該当する事案だが、南北交流協力法を適用したのは違憲の素地がある」と言った。政府内でも「北朝鮮に鉄道を敷こうとし、人道目的だとして大量のコメ支援を推進してきた統一部が、ビラやペットボトルは搬出禁止だというのは拙劣だ」という声が上がっている。
■交流協力法適用は難しいと言っていたのに

 北朝鮮向けビラ散布をめぐる騒動は10年越しの問題だ。政府も最近まで、北朝鮮向けビラを統一部長官の搬出承認が必要な項目と見なしていなかった。ビラ散布を猛非難した「(金正恩〈キム・ジョンウン〉朝鮮労働党委員長の妹)金与正(キム・ヨジョン、党第1副部長)談話」が出た今月4日、統一部当局者は記者らに、「南北交流協力法でビラを規制するというのは違う」と言っていた。

 ところが、突然の姿勢を変えたことについて、統一部当局者は「事情変更があった」と言った。そして、その根拠として軍事境界線で南北間のすべての敵対行為を禁止した4・27板門店宣言(2018年)、場合によっては北朝鮮向けビラ散布を制限できるという大法院判決(2016年)などを挙げた。数日間に法解釈を180度変え、2−4年前の事を根拠に挙げたのだ。

 また、「無理な遡及(そきゅう)適用」だという声も上がっている。過去(5月)のことを処罰するため、後に法の解釈を変えたからだ。統一部が告発方針を明らかにした脱北者団体「クンセム」のパク・ジョンオ代表は「先月、ペットボトルを送る時、統一部から『未承認の搬出品だから承認申請をせよ』などの話はなかった」と語った。統一部当局者は「なかった法律を新たに作って(過去の出来事に)適用するのが遡及適用だ。法解釈を変えただけだから遡及適用ではない」と反論した。

■行き過ぎた「北朝鮮への忖度」?

 北朝鮮が「怒り」を見せるたびに韓国政府が「忖度(そんたく)」するかのように関連措置を打ち出すのも問題点として指摘されている。統一部はこれより前、金与正第1副部長が北朝鮮向けビラに言いがかりを付けて「法でも作れ」と言うと、4時間半で緊急記者会見を開いて「北朝鮮向けビラ散布禁止法」(仮称)を推進すると発表した。これに対して野党は「金与正下命法だ」と反発した。統一部はこの日も、予定になかった緊急記者会見で告発の方針を発表した。北朝鮮が南北間のすべての通信手段を断ち切った翌日のことだった。脱北者同志会のソ・ジェピョン事務局長は「金与正が作れと言ったら法を制定し、脱北者を告発までするとは、北朝鮮の顔色をうかがうにもほどがある」と言った。
キム・ミョンソン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2020/06/11 14:03
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