米国や英国、フランスが中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の排除など「脱中国」で一致し、中国は猛反発している。両陣営の対立にうろたえているのが、コウモリ外交を続けてきた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権だ。韓国経済が22年ぶりの落ち込みを記録するなか、ここにきて習近平国家主席の年内訪韓へ動き出しており、トランプ米大統領の怒りを買いそうだ。

 韓国銀行(中央銀行)は23日、2020年4〜6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比で3・3%減となったと発表した。アジア通貨危機で国際通貨基金(IMF)の救済を受けた1998年1〜3月期の6・8%減以来、約22年ぶりの低水準だ。2期連続のマイナス成長で、韓銀は「景気後退とみることもできる」と指摘した。自動車や石油製品などの輸出が16・6%減と約56年ぶりの落ち込みだった。

 聯合ニュースによると、康京和(カン・ギョンファ)外相は22日、習主席の訪韓について「年内という原則にしたがって推進している」と発言した。いうまでもなく中国は韓国の最大の輸出先だ。

 ただ、中国にすり寄ろうとしている文政権の動きは国際社会と逆行している。米国に続いて英国も第5世代(5G)移動通信システムからファーウェイの製品を排除することを決定、さらにフランス当局も5G参入を目指す国内通信各社に対し、ファーウェイ製品を使用した場合、免許更新はできないと非公式に通達したとロイター通信が報じた。

 ポンペオ米国務長官は「中国の脅威を理解している(国々の)連合を構築できるよう期待する」と述べ、欧州諸国が結束して厳しい対中姿勢をとるよう呼びかけた。

 安全保障上の理由だけでなく、人権上の問題にも切り込んでいる。米国務省はファーウェイについて、中国共産党による反体制派監視や、新疆ウイグル自治区の収容所運営を支援している「手先」だと批判した。

 中国はこれに対し、北欧通信機器大手のノキアとエリクソンに報復を検討すると報じられた。中国外務省は報道を否定している。

 韓国に衝撃を与えたのは、ポンペオ氏が14日、「インドのジオ、オーストラリアのテルストラ、韓国のSKTとKT、日本のNTTのようなクリーンな通信会社と他の企業もやはり自社の通信網からファーウェイの装備使用を禁止してきた」と各国の通信関連企業を列挙したことだった。

 この発言について中央日報(日本語電子版)は、韓国にとって中国を冷遇することが困難であることから、「間接的な圧迫と解釈できる余地がある」と報じた。

 米欧諸国は「香港国家安全維持法」の施行や新型コロナウイルスへの対応などで中国への不信感が極まっており、中国包囲網が形成されつつある。

 香港問題も韓国にのしかかる。香港に拠点を置く資産5兆ウォン(約4446億円)以上の韓国企業数は170社。ポンペオ氏が名指ししたSKTの親会社であるSKグループが44法人を置くほか、ロッテグループが18法人、サムスングループが13法人を置いている。

 切っても切れない中韓関係について、商社マン時代に韓国駐在を経験した朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「サムスンをはじめ、韓国の輸出は中国が生命線になっている。それゆえに米国が目指す中国包囲網に加わりたくない事情がある」と解説する。

 「国安法」施行を受けて、企業が香港からの脱出を急ぐなかで、日本や台湾、シンガポールは誘致に力を入れている。しかしここでも韓国の動きは鈍い。中央日報(日本語電子版)は22日、「韓国政府は手をこまねいているばかり」「『自然に落ちてくる柿』だけを見つめている格好だ」と文政権の対応を酷評した。

 コウモリ外交はいつまでも続けられない。松木氏は「米国も韓国の下心を見透かしているため、ポンペオ氏の発言は踏み絵を踏ませる意味がある。米国の同盟国でありながら中国べったりの姿勢は、どちらの国からも信用されない。中途半端に経済のバランスを崩すことになるだろう」と指摘した。

夕刊フジ 7/27(月) 16:56
https://news.yahoo.co.jp/articles/d72976eba0ce94456636e3b35c217bd78abd18b0