「天才大臣」などと称されることについて、本人は台湾メディアに本音を明かしている。

台湾・台北市の「圓山大飯店(グランドホテル)」の窓に、大きく「ZERO」の文字が灯った。4月14日、36日ぶりに新規感染者が「ゼロ」となった日のことだ。
台湾はその後も新規感染者の発生をほぼ抑え込んでいる。世界でも珍しい「成功例」を支えたのが個性豊かな政府のメンバーだ。
特に、コロナ禍で名を上げたのが「天才デジタル担当大臣」ことオードリー・タン(唐鳳)政務委員だ。限られたマスクを均一に行きわたらせる政策などに尽力した。
トランスジェンダーであることも公表しているオードリー氏。その人物像を明らかにしていきたい。

■33歳のリタイア
台湾や香港など、各地のメディアがオードリー氏にまつわる逸話を伝えている。1981年にジャーナリスト夫妻の元に生まれたオードリー氏は、生後8ヶ月で言語を話し始める。8歳から独学でプログラミングに触れるが、小中学校では転校を繰り返し、14歳で退学する。
学校から去った後は、ネット経由で興味のある分野の研究者にコンタクトを取るなどして、学びを深めていったという。その後、プログラマー・ハッカーとして台頭すると、16歳でインターネット企業の立ち上げに参加する。
24歳のころ、自身のブログでトランスジェンダーであることを公表。その後、生まれた時の名前である「唐宗漢」から現在の「唐鳳」に改名。英語名も「オードリー」とした。
アメリカ・シリコンバレーでは、アップルなどの顧問を歴任する。香港メディアによると、アップル側からは時給=1ビットコインをオファーされたという。記事執筆時点で、1ビットコインの価格相場は100万円を超えている。
2014年、中国との「サービス貿易協定」をめぐる議論に端を発し、学生たちが立法院を占拠した「ひまわり学生運動」に参加。現場からのネット中継を実現させる。その後、33歳でビジネスの世界からリタイアを宣言する。

■在庫データを公開
引退から2年たった2016年、オードリー氏は蔡英文政権に入閣する。この時35歳と史上最年少の若さだった。担当するのはデジタル化やIT政策。政府の仕事を「見える化」する仕事などに没頭していく。
世界的に名前が知られるようになったのは、やはり新型コロナ対策だろう。台湾も、日本と同じように深刻なマスク不足に見舞われた。政府も台湾製マスクの生産を急いだが、限られた量を分配する必要があった。
台湾政府が打ち出したのは実名購入制。市民が持つ健康保険カードと購入歴を紐付けし、大人1人につき週2枚(当時)とするものだった。
しかし、マスクがどこにあるかわからなければ、薬局には長蛇の列が出来てしまう。オードリー氏がとった策は、政府が握るマスクの在庫データを一般に公開することだった。民間のプログラマーたちは、それに呼応するように、地図上でマスク在庫を見られるシステムの開発に乗り出した。
最初は30分おきに地図上の在庫データが更新される仕組みだったのも、30秒にするなど改善。その後、コンビニで予約購入ができる方式など、利用者や薬局の声を受けて改善を進めていった。

■IQ180の噂には...
この奮闘ぶりが伝えられると、次第に「天才IT大臣」などとして日本を含めた海外メディアに注目されていく。
オードリー氏はこの呼び名について、台湾メディアのインタビューなどで「日本のネットでの呼び名ではないでしょうか。西遊記の孫悟空のように、同姓同名だけど全く別のキャラクターだと思っています。もちろん隣国の文化は尊重しますが、大臣ではなく政務委員として私の仕事を理解して欲しいですね」と語っている。
また、同時にメディアで伝えられる「IQ180」などの噂には「180は私の身長のこと。IQは特に今は意義のないものだと考えています。スマホさえあればIQテストで測定限界を超えることは容易なことです」とかわしている。
このように、オードリー氏はメディアの取材にもオープンな姿勢だ。実際、自身のオフィスには「任何人(いかなる人)も来られるようにしたい」としている。メディアも訪問OKだが、取材内容は全編公開されるのが約束事となっている。行政のオープン化を進めるオードリー氏らしい発想だ。

※続きます

ソース
ハフィントンポスト日本版編集部 2020年07月30日 12時45分 JST | 更新 2020年07月30日 19時22分 JST
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f2117c0c5b66859f1f3c152?utm_hp_ref=jp-homepage