11月3日の米大統領選という時限爆弾がチクタクと時を刻む音が、太平洋の対岸から響いてくる。共和党のドナルド・トランプ大統領に挑戦する、民主党のジョー・バイデン前副大統領。一体、どちらが勝つことになるのだろうか?

 この数カ月の世論調査では、バイデン氏がトランプ氏を引き離している。もし、トランプ氏が敗れたら、米国の対中政策はどう変わるのか? トランプ政権のようには、日本を重視しなくなるのか?

 中国については、共和、民主両党とも「中国の鼻っ柱をヘシ折らなければならない」ということで一致している。

 バラク・オバマ前政権時代、オバマ大統領はバイデン氏とともに、中国を巨大市場とみて甘やかしてきた。中国のピノキオ、習近平国家主席は「米国が力を衰えさせた」と誤算して、やりたい放題に振る舞った。

 これに対し、米国民の堪忍袋の緒が切れたために、バイデン氏も、トランプ氏と「アンチ・チャイナ(反中国)」を競うようになっている。

 バイデン氏は、新型コロナウイルスの大感染によって選挙集会を開けないため、自宅の地下室につくったスタジオからテレビ演説を行っているが、習氏を「thug(サッグ=大悪党、大暴漢)」と呼ぶようになっている。

 私は4年前にも、トランプ氏が大統領選で勝つと予想したが、今回も、その可能性が高いとみる。それには、2つの理由がある。

 8月に入ってから、民主党とともに、ネバー(反)トランプ陣営を代弁する「ニューヨーク・タイムズ」紙が、大統領選の恒例となっている両候補の一騎打ちであるテレビ討論会を中止すべきだと主張し始めた。

 77歳になるバイデン氏には「認知症疑惑」が浮上している。3月初めの火曜日の「スーパー・チューズデー」では、14州で民主党大統領候補を選ぶ予備選挙・党員集会が一斉に行われた。

 バイデン氏は「いま、私は上院議員選挙に挑戦している」と述べ、他の会場では「今世紀に入ってから、1億2000万人の米国民が銃によって死んだ」「私が大統領となったら、7億5000万人の働く女性を応援する」といった。米国の人口は3億2000万人だ。

 もう1つは、バイデン氏の副大統領時代、息子のハンター氏が中国側からコンサルタント料として、多額のカネをもらっていた疑惑がある。

 ■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『米陸軍日本語学校』 (ちくま学芸文庫)、『新しいナショナリズムの時代がやってきた!』(勉誠出版)など多数。

夕刊フジ 8/17(月) 16:56
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