「第三国人」は終戦後に広く使われていたが、朝鮮、中国人を指した侮辱表現だ。2000年4月に当時の石原慎太郎東京都知事が自衛隊駐屯地での式典で「不法入国した多くの三国人、外国人が」と発言し、国内外から批判を浴びたこともある。

 同局の広報担当者は「シュンのモデルとなった男性の日記や後年の手記、取材を基に考え、日本史の専門家らのチェックを経て発信している」と説明。「関係者への個人攻撃を避けるため、投稿経緯をつまびらかにするのは難しい」と話した。

 男性は取材に「NHKからは『日記を基に投稿を作る』と聞いていて、手記まで使うとは許可していない。NHKに抗議した」と話した。また、第三国人という言葉を使ったことに差別の意図はなかったとも釈明した。ただ、意図がなくても結果的に差別の効果が生じている。男性は「NHKは投稿すべきでない内容を投稿してしまった。削除するのが当然だ」とも述べた。
同局の広報担当者は「男性が差別意識を持っている方とは思っていない。当時の意識で書かれたものを現代風に手直しした」と答えた。

 ▽虚実ない交ぜ

 識者からもさまざまな批判が上がっている。

 作家の中沢けいさんは「そもそも、投稿に描かれた出来事が本当に75年前に起こったことなのか分からない」と事実関係に疑問を呈する。「投稿は近年の韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチの表現と似ており、現代の差別意識がツイートを制作する過程で入り込んだ可能性もある」と分析。「虚実ない交ぜの話を報道機関が発信し、事実として広がり、差別の温床になった。企画そのものを中止すべきだ」と訴えた。

 ヘイトスピーチ問題に詳しい師岡康子弁護士は、NHKが時代背景の注釈などを一切付けずにツイートした点を問題視する。「誰が、どのような意図で、何を伝えるためにツイートしたのか。今後同じ過ちを起こさないためにも、NHKは具体的な経緯を検証して原因を解明し、公にする責任がある」と話した。

 ネットに詳しいジャーナリストの津田大介氏は「戦後75年がたって戦争体験者が少なくなっている中で、記憶をどう伝えるかという課題はあり、ネットを使おうというアイデアは良かったと思う」と理解を示した上で「文脈が寸断され、意図と違うものになりやすいツイッターの特性に対し、NHKの配慮が足りなかった」と指摘する。

 「ツイッターは投稿にいかなるコメントが付いても投稿者には管理権がなく、それらを削除することはできない。結果、現在も差別的なコメントが野放しになっている。投稿を削除する・しないにかかわらず、きちんと謝罪し、説明を尽くすべきだ」

 広島市では今後も問題を考える集会などが予定されており、問題は収束しそうにない。

(終わり)