菅義偉政権が安倍晋三前政権と同様に、韓国の反日行為や国際法違反を正していく姿勢をとっている点を評価したい。

 ドイツの首都ベルリン中心部の公共用地に、韓国系市民団体が中心となって慰安婦像を設置した問題で、像が置かれた地区当局が設置許可を取り消し、14日までに撤去するよう求めた。

 茂木敏充外相が1日の日独外相テレビ会談で撤去要請するなど、外務省によるドイツ側への働きかけが功を奏した。

 像を放置すれば、慰安婦とは強制連行された「性奴隷」であるといった歴史の捏造(ねつぞう)が広まりかねない。悪質な反日行為の芽は確実に摘んでいかねばならない。

 容認できないのは、韓国外務省報道官が、今回の像を「歴史的事実に関連した追悼教育のため」だと擁護し、撤去を求めた日本政府を「日本が自ら表明した責任の痛感や謝罪、反省の精神にも逆行する」と批判したことだ。

 2015年の日韓合意は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。国と国の約束は守らなくてはならないのに、文在寅政権は日韓合意には法的拘束力がないと主張している。

 いわゆる徴用工問題をめぐり、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた不当判決の問題も解決していない。1965年の日韓請求権協定という国家間の約束を韓国側が無視した、国際法違反の言いがかりで日本側は被害者である。

 菅首相は9月24日、文大統領との電話会談で、この問題などを念頭に「非常に厳しい状況にある両国の関係をこのまま放置してはいけない」と述べ、文氏に解決のための対応を促した。

 だが、文政権はなんら行動を示さない。そのうえ、ベルリンの慰安婦像を擁護する始末である。

 今年は韓国が日中韓首脳会議の議長国で、文氏は菅首相の年内訪韓を望んでいる。だが、北朝鮮問題があるとはいえ、異様な反日姿勢のままの文氏と建設的な話し合いができるとは思えない。現状は首相訪韓の環境にない。

 文氏との電話会談後、菅首相は「さまざまな問題に関するわが国の一貫した立場に基づき、今後とも韓国に適切な対応を強く求めていきたい」と語った。まっとうな対韓姿勢である。菅首相はこれからも、国際法の尊重と国益を追求する外交を貫いてもらいたい。

産経新聞 2020.10.11 05:00コラム主張
https://www.sankei.com/smp/column/news/201011/clm2010110002-s1.html