北朝鮮が10月10日、朝鮮労働党創建75周年を祝う軍事パレードを異例の夜明け前に行い、午後7時から録画放送を行いました。夜明け前に行ったのは航空機にイルミネーションを点けて記念飛行させる演出が目的だったようです。

 そしてパレード中に幾つかの新型兵器が登場しましたが、特に重要なのが初公開の超大型ICBM(大陸間弾道ミサイル)です。

 なんと11軸22輪の発射車両です。火星15号は9軸18輪で車載移動式ICBMとしては既に世界最大の存在でしたが、これを大きく上回ります。ロシアや中国の車載移動式ICBMは8軸16輪ですから、搭載しているミサイルもそれらより遥かに大きなものとなります。

北朝鮮が新型ICBM火星15号を公開、9軸18輪の大型移動発射機に搭載(2017/11/30)

 外観から判断する限り液体燃料式ロケットエンジンで、おそらく主推進部分は二段式です。北朝鮮は昨年12月に東倉里の西海衛星発射場でロケットエンジン燃焼試験を行いましたが、この超大型ICBM用の新型ロケットエンジンの試験だったと考えられます。

北朝鮮「重大実験」は液体燃料ロケットエンジン燃焼試験の可能性(2019/12/9)
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 なお昨年末の燃焼試験当時、筆者は第一報の初期段階で液体燃料ロケットエンジンと推定していましたが、大き過ぎて道路移動に難のある火星15号を小型化する意図があるものと推測していました。しかし北朝鮮の開発意図は逆で、更なる大型化を目指していたことになります。

長射程化
多弾頭化(MIRV)
大重量弾頭化(単弾頭)
 大型化する意図は3つほど理由が考えられますが、射程については既に火星15号で十分だという推定もあります。多弾頭化についてはMIRV技術を開発している兆候がまだ捉えられておらず完全に憶測になります。大重量弾頭化は核弾頭が小型化できておらず運搬できるようにしたことになりますが、これも証拠はまだありません。

 11軸22輪は実戦用の車載移動式弾道ミサイルとしては完全に破格の大きさです。衛星打ち上げ用ロケットの運搬用に短距離を移動する車両ならこれと同様の大きさの例はありますが、運搬専用で発射機ではありませんし、タイヤは車体と比べて小さめで整備された道路で運用するものです。しかし北朝鮮の超大型ICBMは大きなタイヤを履いて道路および野外で機動し長距離を走り回らなければなりません。はたして北朝鮮の貧弱な道路事情で故障せず擱座せず運用することが出来るのでしょうか? 大きくなればなるほど、動かすだけで故障しやすく悪路に嵌まり動けなくなりやすく、運用が難しいものとなります。

Yahoo!Japanニュース 10/10(土) 22:48
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20201010-00202476/

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