朝鮮労働党創建75年を迎えた北朝鮮が、平壌市内で大規模な軍事パレードを行った。新型とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などが行進した。

 金正恩同党委員長は演説で、経済制裁や新型コロナウイルス、自然災害による困難に直面していることについて「面目ない」と語り、北朝鮮国民や朝鮮人民軍に繰り返し感謝を表明した。名指ししての米国批判をしなかった。

 演説では強がりの姿勢がなかったともいえるが、それで日本が油断することは禁物だ。

 金委員長は「いかなる勢力であっても、わが国の安全を脅かせば、最も強力な攻撃力を先制して動員して膺懲(ようちょう)する」と強調し、「戦争抑止力を引き続き強化していく」とも語った。

 軍事パレードから分かるのは、北朝鮮が核・弾道ミサイル戦力を放棄せず、その強化に邁進(まいしん)するという頑(かたく)なな姿勢である。

 共産国家は軍事力を誇示するためにフェイクの装備を並べ立てることがある。今回行進した「新型ICBM」「新型SLBM」が本物であるかは検証が必要だ。ただし、北朝鮮が米本土に届く多弾頭型ICBMなどの保有を目指していることや、日本など周辺国に届く核ミサイルを配備していることは間違いない。

 強制収容所で自国民を残酷に弾圧する北朝鮮の独裁者が、いつもの罵詈(ばり)雑言を控えたからといってだまされてはいけない。

 菅義偉政権は、今も強化されつつある北朝鮮の核・ミサイルの矛先が日本に向いている点に危機感を持ってもらいたい。脅威の解消に向け外交、防衛の両面で努力すべきである。

 経済制裁で困窮していても北朝鮮には核・ミサイル開発継続の余裕がある。洋上で石油類などを密輸する瀬取りに加え、中露両国との通商、サイバー攻撃による海外の金融資産窃取の抜け穴を、制裁強化で防がねばならない。

 北朝鮮には軍事的圧力が有効だが、トランプ政権が「最大限の圧力」路線から後退して久しい。菅政権は、11月の米大統領選後には最大限の圧力路線に戻るよう米政権を説得すべきである。

 日本自らの防衛力充実も急務だ。ミサイル防衛に加え、敵基地攻撃能力を整備することで国民の生命を守り抜かねばならない。

産経新聞 2020.10.13 05:00
https://www.sankei.com/world/news/201013/wor2010130001-n1.html