私のように新型コロナウイルス感染症の影響で韓国に滞在できない状況に直面した外国人が少なくないという。この機に私の私的な近況を伝えようと思う。海外に暮らす韓国人も同じような困難を経験していることだろう。7月末に私が韓国から日本に帰国したのは滞留期間が満了したからだ。日本で新しくビザ(査証)を取得しなければ韓国に入国できないということは知っていたが、何とかなるだろうという考えだった。家もそのままにして今でも家賃を支払っているが、実際、まだ韓国に戻れずにいる。韓国にいた日本人の中には私と似た状況を迎えた人が周囲に数人いる。

滞留期間の満期前に延長できなくなったのも新型コロナと関係がある。博士課程の9月入学を目標に準備していたが、新型コロナで韓国語能力試験が延期になった。韓国語能力試験は有効期間が2年で、私が持っていた試験結果は期限が5月までだった。ところが5月の試験が7月に延期され、入試書類を締め切り日までに提出できなくなった。

博士課程入学で外国人に韓国語能力試験の結果を要求するのは、韓国語で授業を受けて論文を書くのに支障がないかを確認するためだろう。通訳・翻訳大学院に通って修士学位を取得したのに韓国語能力試験だけが韓国語の実力を証明する唯一の方法なのかと疑問を感じたが、他の外国人にも同じく要求される書類なのでやむを得ない。

帰国後2週間の自宅待機を終え、どうやって韓国に戻るかを考え始めた頃、日本の放送局から韓国料理・旅行プログラム関連の現地リポートの話があった。10月の秋夕(チュソク、中秋)連休後、全羅南道(チョンラナムド)に行って取材する日程だった。領事館の関係者に確認したところ、「取材ビザなら発行できそうだ」と聞いて提出書類を準備した。その過程で領事館担当者から「今までフリーランサーの記者に取材ビザを発行したことはない」という言葉を聞いた。

それでも放送局の印鑑を押した書類を提出すればよいというので、在宅勤務中だった担当プロデューサーが出勤して押印した。このほかにも新型コロナの症状がないことを確認する診断書など新型コロナのために増えた書類、そして私がフリーランサーなので略歴など追加で必要な書類もすべて提出した。ところが朝日新聞の記者時代に1週間以内に発給されていた取材ビザは2週間が過ぎても出なかった。領事館の担当者から「発行がまだかという電話は控えてほしい」と言われたが、待ちきれずに電話をしてみた。

その時に担当者から知らされた面接日は書類提出から3週間が経過した後だった。その日に面接を受けても取材日程までに2週間の隔離を終えるのは不可能だった。事情を話したが、担当者は「取材日程にビザの発行を合わせることはできない」という返答だった。それもその通りだ。

取材もビザもあきらめるしかなかった。韓国に入国する方法を最初からもう一度考えなければならなくなった。外国人でフリーランサーという点が社会的弱者であることをこれほど実感したことはなかった。

最近、韓国・日本のビジネス関係者は2週間の隔離なく両国を行き来して活動できるようになった。取材ビザもこれに該当していれば現地リポートも予定通りできていたはずなのに残念だ。それでも可能性が少しずつ開かれていることに希望を感じる。

こうした中、下半期に入って突然、オンライン講演の依頼が増えた。それも韓国観光公社など公的機関の依頼が多い点を見ると、今年は自由な往来が難しいと判断し、オンラインでも韓国の広報をする動きがあるようだ。

私は個人的な関心と取材の仕事のために韓国映画・ドラマのロケ地を回る旅行を2年前からしてきた。ソウルだけでなく釜山(プサン)・仁川(インチョン)・群山(クンサン)・木浦(モクポ)・大田(テジョン)・提川(ジェチョン)などにも行った。そこで撮影した写真を見せながら旅行談や映画・ドラマに関する話を何度かオンラインでした。韓国で活動する日本人俳優・武田裕光さんと大阪−ソウル間のオンライン対談もした。

(続く)

成川彩/元朝日新聞記者
中央日報日本語版 10/17(土) 13:15
https://news.yahoo.co.jp/articles/a542c76b3ca7f482a43dd009f6410c3d0836f7ac