韓国が建造を決めた初の国産航空母艦は、果たして北朝鮮への対処だけが目的なのか。いや、実は日本に対する抑止や攻勢という戦略目的も含まれているのだ、という見解が米国で指摘されるようになった。

まさかと思われる観測だが、韓国には実際に日本を脅威とみて海空軍の強化を図った過去の記録も存在するのだ。

■米国、日本に次いでF35Bを搭載機に
 
韓国国防省は今年(2020年)8月に韓国としては初めてとなる航空母艦を2021年から建造すると発表した。

同発表によると、この国産空母の建造は、2021年から2025年までの国防中期計画に組み込まれている。

建造するのは3万トン級の「軽空母」の予定で「部隊や装備品、物資を輸送し、垂直離着陸が可能な戦闘機を運用することができる」としている。艦載用の戦闘機としては米国製のF35Bを予定しているという。

建造予算は艦載機分などを含めて17億5000万ドルほどに達し、実戦配備は2033年ごろになると予測されている。

F35Bは世界最高レベルの短距離離陸・垂直着陸の能力を有し、小型空母に搭載しての運用が可能とされる。F35Bを空母の艦載機とするのは、現時点では西太平洋で米国と日本だけであり、韓国の空母計画が予定どおりに実現すれば3番目の国となる。

■北朝鮮との有事で空母が必要なのか
 
この空母建設と配備の目的について、韓国国防省は「朝鮮半島付近の海域と遠海の海上交通路を保護するため」と述べている。

「朝鮮半島付近の海域の保護」とは当然、北朝鮮への対処であり、北朝鮮の韓国攻撃という有事に備え、新空母は北朝鮮の沿海から抑止や攻撃の役割を果たすとみられる。

また「遠海の海上交通路の保護」とは、中東から東アジアに至る「原油運送路」の防衛や保護を意味するとみられる。その場合、韓国海軍にとっては年来の軍事任務の大幅な拡大となる。

しかし韓国にとって最大かつ現実的な脅威である北朝鮮の軍事能力に対して、航空母艦が果たしてどこまで必要で有効なのかについては、韓国内でも議論が起きていた。

韓国にとって北朝鮮の脅威は基本的に地上戦力である。その戦力への抑止や反撃も、あくまで地上からが主体となる。そのため韓国の軍事専門家たちからは、「北朝鮮との有事で空母を必要とする度合いは低い」という意見が相次いでいる。

2020.11.4(水)古森 義久
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