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2月7日に新型コロナの感染実態を初めて告発し、自身も新型コロナで死亡した武漢の李文亮医師のニュースは、網信?にとって最大の課題だった。「李文亮医師を死なせたのはウイルスを隠ぺいした政府」という批判がソーシャル・メディアを中心に広まったためだ。

網信?は全国の報道機関に同医師死亡のニュースをすぐに伝えるなという指示を下した。ソーシャル・メディア企業は同医師の名前を「人気検索ワード」ランキングで段階的に下げ、同医師を追悼するロウソクの写真などを削除するよう要求した。

「コメント部隊」も投入され、24時間非常勤務体制を稼動させた。網信?はこれらの人員に「弱く音がしない雨のように染み入れ(潤物細無聲)」「絶対に身元を気付かれてはならない」と強調した。

NYTが確保した内部文書によると、コメント工作員は400文字以上の書き込みを1件作成すれば160元(2500円)、不適切な書き込みを1件摘発すれば2.5元(40円)、広報的な性格を持つ書き込みで「シェアする」を1回クリックすれば0.5元(8円)を受け取ったという。

2013年にハーバード大学が発表した論文では、中国のコメント部隊の規模は数十万人と推定され、このうち相当数が「『副業』の政府機関職員」だとのことだ。

李文亮医師事件の余波により、網信?は3月に新たな世論統制指示を下した。「四半期ごとにすべてのインターネット・サイトに『検閲点数』を付けて評価する」というものだ。各メディアにあらかじめ自己検閲を強化するよう指示したものだ。NYTは「この路線が現在まで続いている」と報じた。

中国は新型コロナ世論統制に技術系企業を積極的に活用した。中国政府の協力会社である雲潤はコメント工作員のためのソフトウェアを開発し、これら工作員がネットにコメントを書き込んだら短時間で「いいね(推薦)」を多くもらえるように操作した。

コメント部隊が作成した書き込みの数や波及力の評価といった「実績」も雲潤がリアルタイムで集計していたという。雲潤は「コメント工作シミュレーション」サービスも提供していたと言われる。

シミュレーションでは、コメント工作員が2チームに分かれて、仮想のネット空間で広報する書き込みを掲載した後、誰が「いいね」をより多くもらえるのか競う方式になっている。

米カリフォルニア大学バークレー校情報大学院のシャオ・チャン教授は「中国が政治の武器として使用している検閲制度は、単なる内容削除にとどまらず、中国が注入しようとするメッセージを作成するツールになった。どの国もこのようなことはできなかった」と語った。

>>おわり。