12月14日、韓国の国会は、南北関係発展法を一部改正し、北朝鮮に対する「ビラ散布」を禁止する法律(以下、「ビラ散布禁止法」)を本会議で可決した。野党が強く反対する中、与党「共に民主党」が強行採決に踏み切った末の可決だった。

 だがこの法律に対しては、韓国国内からばかりか、米国や国際的人権団体からも批判・反発の声が上がっている。

 ビラ散布禁止法を巡って、韓国の政府・与党は四面楚歌状態にあるのだが、なぜそれほど反発を招く法律を制定しなければならなかったのだろうか。

きっかけは金与正氏の談話

 ビラ散布を禁止する発端となったのは、6月4日に金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第一副部長が出した、脱北者によるビラ散布を非難する談話だった。


 その4日前の5月31日、韓国の脱北者らが作る民間団体が、南北軍事境界線付近から北朝鮮に向け、金正恩体制を批判するビラおよそ50万枚を、水素ガスで膨らませた大型風船を用いて飛ばしていた。この行為に対して金与正氏が反応、「南朝鮮はくずたちの茶番劇を阻止する法律でも作らなければならないだろう」などと激烈な談話を出したのだ。

 韓国はすぐさま反応した。金与正氏の談話からわずか数時間後、韓国統一部は予定になかったブリーフィングを急遽行い、「ビラ散布が南北間の緊張と南側地域に環境汚染を引き起こすために禁止法案を準備中だ」と明らかにした。金与正氏の激烈談話に、どれだけ慌てふためいたのかがよく分かる。

しかし、それで大人しくなる北朝鮮ではない。金与正氏は韓国政府のビラ禁止方針に感謝するどころか、対南挑発をさらに強化する。6月9日には、韓国政府に対する最初の報復措置として南北間の通信連絡線の遮断を決定、13日には軍事行動を示唆、そして16日には、開城にある南北共同連絡事務所を爆破してしまった。

今回のビラ散布禁止法の強引な可決は、この延長線上にある。だが、それが外国や国際人権団体から猛烈な批判を浴びているのだ。

 韓国がビラ散布禁止法を制定したことに対し、ロバート・キング元国務省対北朝鮮人権特使は「このような文在寅政権の迅速な屈服が本当に危険な点は、韓国の対北朝鮮交渉力は弱まり、北朝鮮のさらに強硬な態度を招くという点にある」と述べている。金与正氏談話後の北朝鮮の動きを振り返れば、まさに頷ける分析だ。そして、このままでは韓国は、北朝鮮の言いなりになり、今後も同じ過ちを繰り返す可能性がある。


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