(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の国勢調査にあたる第7回人口一斉調査(2020年に行った国勢調査)の結果が5月11日に発表された。本当なら4月中旬に発表される予定だったが1カ月延期されていた。

 延期の理由について、英フィナンシャル・タイムズ(FT)が4月27日に特ダネとして、調査の結果、中国の人口が減少に転じたことがわかり、政治的に注意を要する問題をはらんでいることから、関連部署の認識のすり合わせができるまで発表が延期されたのだ、という見方を報じた。

 FTは、第7回人口一斉調査の結果では総人口は14億人を切っていると報じていた。だが、公式に発表された調査結果では、総人口は14億1178万人とされた。つまりFTの特ダネ報道を全面否定した格好になった。FTの特ダネが正しいのか、それとも中国公式発表がデータを改ざんしたのか。

■ 中国当局は「人口は安定的に成長」

 新華社の報道をもとに、公式発表結果の概要を説明しよう。

 全国の総人口(31省・自治区・直轄市・軍)は14億1177万8724人で、前回2010年の第6回全国人口一斉調査の結果より7206万人増、増加率は5.38%となった。年平均増加率は0.53%で、2000年から2010年にかけての年平均増加率よりも0.04ポイント下がった。

 全国人口中、漢族は12億8631万1334人で91.11%を占める。2010年の調査結果と比べると漢族人口が6038万人ほど増加し、増加率は4.93%。一方、少数民族人口の増加率は10.26%だった。

 調査チームの副組長で国家統計局長の寧吉浮ヘ、今回の調査結果について、「わが国の人口の増加速度は緩やかに減速し、安定的に成長している」と評価した。また、目下、出産年齢の女性が3億人余りおり、毎年1000万人以上の人口が新たに生まれ続けることができるとして、今後しばらくは14億人人口が維持できるとした。FT紙などが指摘した「中国人口が減少期に入った」という見立てを、否定した格好になる。

 中国では産児制限政策である一人っ子政策が2015年に終了。2016年からは二人目の出産が可能になった。2016年、2017年の出生人口はそれぞれ1800万人、1700万人となり、一人っ子政策時代よりも100〜200万人増えている。また2014〜2017年に生まれた人口の中で第二子が占める割合が増えている。たとえば2013年には第二子は全体の30%前後であったのが、2017年には50%前後になった。2018年には第二子の割合は40%前後に下がったが、一人っ子政策の見直しによって、全国で第二子の出生数は1000万人以上になった。2020年の出生人口は概算で約1200万人というが、それでも規模は小さくない、と寧局長は主張している。

 ちなみに2020年の合計特殊出生率は1.3。新型コロナ肺炎の影響で、生活の不確実性が増えたことや病院での分娩への安全性の懸念から、子供を産みたいという意欲が減少したとみられている。

 中国の世帯数は4億9416万世帯で、一世帯の平均人口は2.62人。2010年よりも0.48人減少した。核家族化がすすみ、高齢者の生活支援が家庭外の社会政策に依存しなければならない状況が進んでいる。

 一人っ子政策の弊害として指摘されていた男女性別比の不均衡については、かなり是正された。今回の調査では、出生人口性別比率が女児100人に対し男児111.3人となり、10年前の調査時よりも女児100人当たりの男児出生数は6.8人減少した。

 また年齢別人口比率については、0〜14歳人口が2億5338万人で総人口の17.59%を占め、15〜59歳の生産人口は8億9438万人で63.35%を占めた。60歳以上の人口は2億6402万人で18.70%。このうち65歳以上は1億9064万人で13.50%を占めた。2010年と比べると0〜14歳人口は1.35ポイント、60歳以上人口は5.44ポイント、それぞれ上昇した。15〜59歳人口は6.79ポイント減少した。中国の平均人口年齢は38.8歳。米国とほぼ同じだという。

 また大学レベルの教育水準人口が2億1836万人となり、10年前の調査時と比べて1億5467人増加した。

 都市部と農村の人口を比較すると、都市人口が9億199万人で63.89%、農村人口は5億979万人で36.11%。2010年当時と比べると都市人口が2億3642人増加し、農村人口が1億6436万人減少したことになり、都市人口の比重は14.21ポイント上昇した。

 中国は農村戸籍と都市戸籍に分けられ、戸籍登録地から原則移動できない独特の戸籍制度が継続されているが、この戸籍による束縛は年々緩んでいる。今回の調査では戸籍登録地から離れている人口は4億9276万人で、2010年当時から88.52%増えた。内訳は、農村が都市に区画されたことによる戸籍変更が1億1694万人、流動人口が3億7538万人、それぞれ2010年比で192.66%増、69.73%増という。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/7e334223f0ae38b9332761dc4e5ae49d1aa437a1