5月、中国は10年に一度行われる国勢調査の結果を公表した。高齢者が10年間で6割増加する一方で、昨年の出生数は前年比で2割近く減少。少子高齢化が加速している。5月31日、中国政府は人口抑制の緩和に向けて「3人目まで出産を認める」方針を明かしたが、立ちはだかる「壁」を崩すのは容易ではない。(日中福祉プランニング代表 王 青)

● 中国で加速する少子高齢化 都市部の新生児減少が顕著

 先月31日、習近平国家主席が開いた共産党中央政治局会議の中で、「高齢化への積極的な対応策として生育政策を改善すべき、一組の夫婦に子ども3人までの「三人っ子政策」を実施し、関連の支援策もセットで導入する」と発表された。中国国内メディアが一斉に報じた。たちまち、百度(バイドゥ)や微博(ウェイボー)などのサイトで軒並み注目ランキング1位となって、SNSでの書き込みが溢れかえっている。

 中国政府がこの政策を早晩打ち出すことは皆予想していた。その背景には、少子高齢化が急速に進んでいることがある。

 5月11日、中国国家統計局は、2020年に実施した国勢調査の結果を発表した。この国勢調査は、10年に一度行われており、昨年実施されたのは第7回に当たる調査だった。

 国家統計局の正式な発表を見てみると、香港、マカオ、台湾を除き、総人口は14億1177万8724人で、10年前の2010年と比べて7206万人の増加となった。増加率は5.38%ということで、依然として世界一の人口大国である。

 そしてその内訳を見てみると、高齢者が10年間で6割増加。その一方で、2020年の出生数は約1200万人と、前年比で2割近く減少し、中国国内で少子高齢化が加速していることが明らかとなった。

 特に、先進都市である北京や上海では、新生児の減少が著しい。北京の場合は、戸籍人口における新生児の数が2020年は10万人であると発表されている。この10年間で最も少なく、前年から一気に24.3%も減った。また、上海では、ある数値がネット上で拡散され、人々に衝撃を与えた。それは、上海で元日に生まれた新生児の数の10年ごとの推移である。2000年には1148人、2010年は380人、2020年は156人となっているという。1日の数とはいえ、20年間で約86%も減少した計算となる。

 中国がかつて人口抑制政策として実施していた「一人っ子政策」は、2015年に終止符が打たれた。その翌年には、「二人っ子政策」を開始したにもかかわらず、少子高齢化は加速している。背景には、近年晩婚化が進み、結婚したくないと考える若者が増えている中で婚姻率が下がっていることと、離婚率が上昇していることがある。

 また、2人目まで産むことが緩和されても、産みたくないと考えている夫婦が多いようだ。今回の国勢調査では、1人の女性の生涯の出生率は1.3と発表されており、日本の1.36(2019年)を下回っている。

 出生人口の大幅な減少は、中国の社会の変化をそのまま物語っているのではないかと考える。

 「結婚したくない」「結婚しても子どもをつくりたくない」。また、「結婚したくても相手が見つからない」「子どもが欲しい。でも、育てていく財力と気力がない」など、中国の若者は今さまざまな思いを抱えている。

● 子育て世代が直面する「三つの壁」 家計を圧迫するローン、教育費

 こうした悩みの背景には、不動産価格、教育費、厳しい社会競争という「三つの壁」があるといわれている。

 中国では、急速な経済の発展とともに、約20年の間に不動産価格が数十倍にまで高騰した。大都会の場合、街の中心にある老巧中古のマンションでも1億円はくだらない。住宅ローンの返済、あるいは不動産価格上昇につられて上がった家賃の支払いは、若夫婦の家計にとって大きな負担となる。

 そして、子どもが生まれたら、中国の厳しい競争社会が待ち構えている。親たちは「スタートラインで負けさせる訳にはいかない」という一心で英才教育に力を注ぎ、学校以外に家庭教師を付けたり、水泳、楽器、バレエなど複数の習い事に通わせたりすることで、教育費が家計を圧迫していく。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/e1418da6d7fcd65a5b97c722f9cf081481405cee