https://news.goo.ne.jp/article/mag2/world/mag2-501600.html

大々的に報じられた、日本から台湾へ124万回分の英アストラゼネカ製ワクチン贈呈の美談。これに“水を差す”ような報道が日本と台湾で話題になっている。それが、「中国通信社」なる中国系サイトが報じた「台湾、日本寄贈のワクチン接種後に62人急死 対日感情悪化の危惧も」というニュースだ。しかし、このサイトがソースにしているのは、同じく中国系のニュースサイト「観察者網」である。果たして、本当に台湾の対日感情は悪化しているのだろうか?調べてみると、日本国内での報道とはまったく異なる状況が浮かび上がってきた。
台湾メディアと中国メディアで“真逆”の報道スタンス

「中国通信社」の報道によると、英アストラゼネカ製ワクチンを日本が台湾に寄贈した後、台湾でワクチン接種者62人が死亡し、うち最年少者は42歳だったという。「中国通信社」は中国系のニュースサイトである。

● 台湾、日本寄贈のワクチン接種後に62人急死 対日感情悪化の危惧も(中国通信社)

ソースは中国系サイトのみであるため、台湾メディアでの報道をチェックする必要がある。

上記記事によると、

19日の中国のニュースサイト「観察者網」によると、日本から台湾に124万回分の英アストラゼネカ製ワクチンの寄贈後、15日から台湾では大規模接種が行われているが、接種後に急死する事案も出ている。現時点までに62人が亡くなり、死亡者のうち最年少は42歳だった。台湾のニュースサイト「東森新聞雲(ETtoday)」が19日夜に伝えた。

としている。

一方、台湾メディアの報道はどうか。実際に台湾メディアでどのような報道が出ているかを調べたところ、台湾「東森新聞」公式による以下の動画がヒットした。

● 打AZ疫苗2天11死!恐現緩打潮 接種人潮減 7線變3線

6月16日配信の上記動画によると、日本から贈られた英アストラゼネカ製ワクチンを接種した人が2日間で11人死亡した、と伝えている。しかし、この動画を見る限りでは、「対日感情が悪化」という内容は一切見受けられない上に、死亡者のほとんどが日本からのワクチンが原因だ、とも断定されていない。中国メディアの報道と台湾メディアの報道では、スタンスがまるで違うのだ。
「対日感情悪化」のソースは、日本の日刊ゲンダイ

先般の中国系サイトの記事によると、日本のタブロイド紙「日刊ゲンダイ」が、台湾で急死の事案が頻発したことを受けて、対日感情の悪化を危惧している、と報じているとしていた。そこで「日刊ゲンダイ」をチェックすると、19日に以下の記事がアップされていた。

● 台湾に激震!アストラゼネカ製ワクチン接種直後に36人死亡(日刊ゲンダイ)

上記「ゲンダイ」記事の一部を引用しよう。

15日から高齢者を中心にAZ製の接種が始まったが、18日までの4日間で優先接種を受けた高齢者42人が死亡。このうち36人はAZ社製を接種した直後に死亡していたと台湾アップルデイリー電子版が報じたのだ。6人は解剖の結果、AZ製との関係がなかったことが明らかになった。しかし残る36人は司法解剖の段階にあり、因果関係はいまだに解明されていないが、15日から連日トップニュースで報じられ、AZ製への信頼性は著しく低下している。

この記事によると、台湾の現地メディア「アップルデイリー」電子版が、ワクチン接種で死亡した42人のうちアストラゼネカ製ワクチン接種者が36人、うち6人の死因が同社ワクチンとは無関係だったと報じているとしている。

しかし、すべての死者の因果関係は未だ解明されていないとして、現地の台湾人が日本から贈られたワクチンの安全性を疑問視している、としている。

さらに、「ゲンダイ」は在台邦人のコメントとして、

「政治的意図をもった不用意なワクチン寄贈が在外邦人、そして台湾の政権に大きな危害をもたらす可能性があります」

と、台湾と深い関係を持つ自民党議員による「ワクチンの政治利用」を批判するとともに、今回の死亡者発生が対日感情悪化につながる恐れもあるとしている。しかし、「ゲンダイ」と言えば反自民系メディアの代表格だ。ある種のバイアスがかかっている可能性は否めないだろう。本当にワクチンのせいで台湾人の対日感情は悪化しているのか?
現地「アップルデイリー」も“関係悪化”は報じず

以下ソース