旧統一教会の元信者が語る献金問題 「韓国への罪悪感が強い動機に結び付く」
「家族は愛情が強いほど宗教団体への憎悪が暴走」ジャーナリスト・多田文明氏

安倍晋三元首相を銃撃し、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)をめぐっては、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信した母親の巨額献金が家庭崩壊を招いたという背後関係も浮上している。母親はなぜそこまで献金を重ねたのか。旧統一教会に入信経験を持つジャーナリストの多田文明氏は、自身の経験から「罪悪感が献金への強い動機になっている」と話す。



山上容疑者の親族らによると、母親の献金額は総額約1億円にのぼり、破産した後も献金を続けていた。

悪徳商法に詳しい多田氏は、1987年から約10年間入信していた。その経験を元に「信者に罪の意識を植え付け、償いとして多額の献金を求める。教義ではそもそも人間は堕落し罪を抱えた存在だとし、日本人は韓国を植民地として支配していた時代にひどい仕打ちを繰り返したと徹底して教え込まれた。韓国への罪悪感が献金への強い動機に結び付くからだ」と説明する。

全国霊感商法対策弁護士連絡会は12日の記者会見で、日本国内で求める献金は韓国での献金の約10倍にのぼると明らかにしている。

多田氏は「(創始者の)文鮮明氏が、日本が植民地化していた韓国で、当時の警察から拷問を受けたという話も教えられた。『日本人は救世主(文氏)にもムチを打った罪を背負っている』という言い分だった」と振り返る。

母親の入信や献金で家庭が崩壊したことに恨みを持ち続けた山上容疑者だが、ツイッターや犯行直前にジャーナリストへ送ったとみられる手紙には「オレは努力した。母の為に」など家族への愛情をにじませる文面もあった。

これについて多田氏は「母親が入信したことで、自分自身もみじめで悲惨な目に遭っているという訴えや、家族への愛情を読み取ることができる」と語る。

多田氏が脱会できたのも、家族や親族のサポートがあったという。一方で「信者の家族は、愛情が強いほど宗教団体への憎悪が暴走してしまうことがある。憎悪が凶行へつながる前に、山上容疑者の考えを受け止め、軌道修正できる第三者がいればよかったのだが」と多田氏。

山上容疑者の凶行について多田氏は「最悪の形だが、1980年代に注目された霊感商法がいまだに存在することや、正体を隠し接触する勧誘の手口、政治家との関係、宗教2世問題などが明るみに出た。報復を恐れていた元信者らも声を上げやすくなった」とする一方、こう強調した。

「殺人事件に発展するまで問題が放置されてしまった。恨みは実力行使で晴らすべきではなく、こうなる前に問題が白日の下にさらされるべきだった」

https://www.zakzak.co.jp/article/20220720-WK3DSD3XEZLRNPBD6SF3T6722M/