中国人富裕層の日本への移住が増えている。不動産業者や中国人コミュニティからそうした声が聞かれる。背景には母国での社会的、政治的緊張がある。

北海道小樽市で不動産業を営む石井秀幸は、日本に移住するため不動産の購入を希望する中国人からの問い合わせが、最近急増していると話す。
アマンダ・ウー(62)もその一人だ。中国国有企業の元幹部で、国際不動産投資で富を築いた。とりわけ新型コロナウイルス流行に伴う規制や自由が制限されていることへの懸念から、日本に関心を向けたと語る。
「ロックダウン(都市封鎖)はとてもつらかった」とウー。中国で大半の規制が解除されたため北京に戻る機会が増えるだろうが、それでも日本での滞在を続けるつもりだという。友人の間では、日本移住への関心がかつてないほど高まっている。
ウーは、中国が国境管理の解除を維持する限り、短期滞在か長期移住かを問わず、今後中国人が日本に押し寄せることは間違いないと語った。ウーへの取材は、中国が昨年末に入国者への隔離撤廃を発表する前に行われた。
ウーは雪深い港町の小樽で11月から寝室が4つある家に暮らし、200万元(約3800万円)で市内に購入した10件ほどの不動産を管理している。
これまで観光客として日本を訪れていたウーだが、今回は経営・管理ビザで日本に入国した。

2022年1~10月に新たに2133人の中国人がこのビザで日本に入国した。この数は、コロナで日中間の渡航の大半が停止される直前の2019年に打ち立てられた年間最多記録1417人を上回る。このビザは通常、少なくとも1年間有効で、更新が可能だ。
日本人は近所に外国人が越してくることを快く思わないこともある。だが日本には、犯罪率の低さや一般的にきれいな空気、円安によってさらに安価になった不動産といった魅力がある。
日本に30年近く住む中国人女性実業家の王青は、日本に移住したがっている中国の友人との会話から、コロナ規制や政府の強引な政策によって追い詰められている人たちがいると考えている。
王は、友人の高級マンションに当局者が押しかけ、所有物に消毒剤を噴霧したため高価なバッグが台無しになった話をした。「いくらお金を持っていても人権が守られていない」と王は言う。
コロナ規制が解除されても、中国人の日本移住を後押ししている要因の多くは変わっていないと王は考えている。コロナの流行が収束して渡航制限が一段と緩和されれば、移住計画を実行しやすくなるとみている。

米国の入国管理が厳しくなり、日本が狙い目に
中国人の移住先は日本だけではない。中国のシンクタンク、全球化智庫(CCG)が一覧にした2019年の国連データによると、中国人移住者の数は米国が最も多く約290万人、次いで日本が78万人、その後にカナダ、オーストラリアが続く。この数字は入手可能な直近のデータであり、中国国籍を持つ人の数であって、これら国々の中国系の市民は含まない。
最近では、米国の入国管理が厳しくなっているため、日本への移住を考える人が増えている。日本を拠点とするビジネス(不動産の購入や不動産管理ビジネスの立ち上げなど)に500万円を投資すれば、経営・管理ビザの取得資格が得られる可能性がある。

一方、米国で同様のビザを取得するには、最低でも80万ドル(約1億1000万円)の投資が必要だ。中国人に人気のシンガポールの場合は、約185万ドル相当以上の投資を要件としている。
中国大陸や朝鮮半島から渡来した人たちがもたらした中国文化は、文字体系や稲作、仏教など、日本の文明の多くの部分の礎となった。中国の政治や社会が不安定だった20世紀初めにも、革命指導者の孫文など多くの知識人が日本で暮らした。
コロナ流行前は、年間何百万人もの中国人観光客が日本を訪れていた。東京や大阪、京都に滞在用の物件を購入したり、商業用不動産に投資したりする人もいた。

小樽の一軒家は北京のトイレより安い
日本のビザ代行サービス業者によると、昨春に上海で数ヵ月間に及ぶロックダウンが実施された後、そして10月に習近平国家主席の続投が決まった後に、中国からの問い合わせが急増した。
東京で不動産会社を経営する中国人男性は「いつ生活が突然変わるかわからないので、不安になって不満がたまっている。警察が来て連れて行かれるかもしれない。だから、国を出ましょうということになる」と話す。

以下ソースから
1/4(水) 9:45配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/b39839754afa0a75bbede33c190da1445682e1ae?page=2