日米両政府は国際的なサプライチェーン(供給網)から人権侵害を排除するため、関係省庁による新組織を設立する方針を固めた。中国の新疆ウイグル自治区での強制労働問題などを念頭に、米国が強化している規制を日本企業にも浸透させる狙いがある。

 複数の政府関係者が明らかにした。5日から訪米する西村経済産業相が米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表と会談し、組織設立の覚書を締結する。

西村経済産業相
 新組織は、日本側から経産省と外務省、米側からUSTRや国務省、商務省や労働省などが参加するタスクフォース(TF)で、経産省とUSTRが共同議長として窓口役を担う。

 具体的な取り組みとして、強制労働や人種、宗教差別といった人権侵害の根絶に向け、供給網に関わる規制や政策を日米の当局と企業などの間で共有し、規制が企業活動に与える影響の分析なども行う。

 米政府は近年、新疆ウイグル自治区で少数民族が強制労働させられていると指摘し、供給網からの排除を進めている。

 2021年には、仕入れ先が強制労働に関わっていないことの証明が不十分だとして、カジュアル衣料「ユニクロ」のファーストリテイリングの米国内への輸入を差し止めた。昨年6月には、新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」を施行した。

 日本企業からは経産省に対し、対米輸出差し止めなどのトラブルを回避するため、情報提供の強化などを求める声が寄せられていた。

2023/01/05 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230104-OYT1T50215/