2023年1月16日から26日にかけて、インドの戦闘機4機(インド初の女性戦闘機パイロットも含む)と大型輸送機2機、空中給油機1機が、茨城県にある百里基地にきて、航空自衛隊と共同演習「ヴィーア・ガーディアン」を行う。日印で行われる初めての戦闘機の共同演習である。実は、大変重要な演習である。
 なぜそういえるのか。筆者は、日印戦闘機の共同演習について長らく、その重要性を繰り返し指摘してきた。筆者の知る範囲では、日本でその必要性を訴えて執筆し続けてきたのは筆者一人である。だから、今回、実現するにあたって、なぜこの演習がそれほど重要なのか、きちんと説明したい。大きく3つの理由がある。

対中国戦略としての有効性
 最初に、この演習は、中国を念頭に置いた国家戦略上、とても重要である。スウェーデンのシンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、11~20年の間、中国の軍事支出は76%伸びているが、日本は2.4%しか伸びていない。アメリカは10%減っている。
 このような環境においては、日本単独では、中国とどんどん差をつけられてしまう。次の5年間で防衛費を伸ばしたとしても、全然足りないだろう。だから多国間で協力して、中国の軍事支出や戦力を多方面に分散させる努力が必要である。
ー中略ー

悪い流れの日印関係を変える
 次に、この演習は、日印の防衛協力を考える上で、重要である。日本とインドとの間では、すでに物品や機密情報を共有する協定が結ばれ、共同演習も、海上自衛隊の「マラバール」と「ジメックス」、陸上自衛隊の「ダルマ・ガーディアン」、航空自衛隊の輸送機の共同演習「シンユウ・マイトゥリ」が、継続して行われている。また、日印間では、軍事用無人車両の共同開発が進んでいる。
 その一方で、最近は、日印間の防衛協力が円滑に進まない事例が次々起きている。まず、日印の防衛協力を強く推進してきた安倍晋三元首相が暗殺されてしまった。日本中探しても、インドのことをあれほど愛して、インドからも愛され、しかも権力や実行力を持った指導者は、他に見当たらない。
ー中略ー

ロシアと中国を知るためにも有効
 最後に、この演習は、特に日本にとって、戦術上、得るものが多いことが重要である。
 インドが今回、日本に持ち込む戦闘機はスホーイ30戦闘機だ。これはもともとはロシア製の戦闘機である(一部電子機器などをフランス製にするなど改造されてはいる)。実は、中国が保有している戦闘機も、スホーイ30とその派生型が多い。だから、日本の戦闘機にとっては、インドの戦闘機と戦う訓練は、中国やロシアの戦闘機と戦う訓練にもなるものだ。
 それは日本の戦闘機パイロットにとって貴重な経験になる。日本としては、もっと広範に、頻繁に実施し、多くのパイロットを鍛えたいところだ。
 インドにとっては、すでに米国とも、豪州とも、戦闘機の訓練を実施したことがある。米国製の戦闘機との訓練は経験済だ。だが、日本と訓練することで、今後、日米豪印の「クアッド(QUAD)」4カ国全体で訓練する際の方法について、具体的に検討することができるようになる。それは意義がある。
 また、日本は、日々、中国機やロシア機の領空侵犯に対処しなければならない国だ。インドは、ロシアから戦闘機の使い方を学んだことはあるが、ロシアが「敵」になった経験はないだろう。
 それに、もし海の上空での空中戦の訓練を行う場合、陸の上空とは違う部分があるかもしれない。その際は、日本の方が得意かもしれない。これからインド洋でより広く活動するであろうインドの方も、日本から学ぶ戦術上の教訓は多いだろう。
以下ソースから

1/9(月) 11:27配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ef8177058105e08a83242359094066be3780d52?page=1