北朝鮮無人機の領空侵犯で大騒ぎの韓国、同じことをしてどうする?
羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 2022年12月26日、北朝鮮の無人機5機が韓国の領空を侵犯したことで、韓国はパニック状態に陥った。
 パニックになった理由には、韓国軍が発進させた攻撃用ヘリコプターが100発もの射撃を行ったにもかかわらず、無人機を撃ち漏らしたり、続けて発進させた戦闘機が離陸中に墜落したりと、韓国軍の失態も大きく影響している。
 さらに言うと、27日には無人機だと思われるものを確認したため、戦闘機や攻撃ヘリで約3時間追跡したところ鳥の群れだったことが判明。翌28日も監視レーダーに正体不明の航跡が映ったことから戦闘機を緊急出撃させたところ、無人機ではなく風船だったことが分かった。
 にわかに信じられない出来事が立て続けに起こった。

 一連の騒動を受けて、韓国国民は「韓国の防空網に穴が開いている」と不安を募らせている。
 韓国メディアは「北朝鮮の無人機部隊が17キログラムの炭疽菌をソウルに噴霧すれば、ソウル市民の半数が死傷」と報じた。ソウルの人口は約940万人だから、その半数となると470万人が死傷することになる。
 韓国は首都圏に人口が集中(約50%)しており、これが現実に起これば国は瀕死状態に陥るかもしれない。
 前置きが長くなった。2022年末の北朝鮮による無人機騒動によって、韓国国民は他国が自国の領空を侵犯することがどれほど深刻な問題なのか、身に染みて感じただろう。

 そんな韓国人が、自作の無人機で日本の領空を侵犯していたことが最近明らかになった。
自作無人機で日本の領空を侵犯していた大邱無人機同好会
 嶺南(ヨンナム)日報という韓国の地方紙が独自ニュースとして1月6日に報じた「北朝鮮顔負けの無人機の製作・運用 対馬の撮影も成功」によると、大邱(デグ)無人機同好会に所属するA氏が製作した無人機が、二度も日本・対馬の無人機撮影に成功したという。
 対馬の撮影に成功した無人機は、発泡ポリプロピレン(EPP)でできた飛行隊にカメラとバッテリー、自動飛行装置、GPS受信装置、映像送信器などを取り付けた簡素なものだ。製作費はおよそ10万円だという。EPPは発泡スチロールよりも少し硬い素材だ。
 嶺南日報のインタビューにA氏は「韓国国内はもちろん、北朝鮮や日本で無人機撮影が可能なのは、一般の飛行体やドローンのような金属ではなく、EPP材質だからだ」「EPP材質は発泡スチロールのように白いため、高く浮いている時はレーダーに感知されないだけでなく、肉眼でも鳥と認識される」と答えていた。
 嶺南日報は「驚くべきことに、以前、A氏が金剛山(クムガンサン/北朝鮮にある山)撮影に成功した無人機は長さが60センチしかなかった。2022年12月26日、ソウル上空を侵犯した北朝鮮無人機の大きさが2メートル程度だった点を勘案すれば、識別感知も容易ではない」と、A氏の技術の高さを評価した。

気づかずに自国民の領空侵犯を世界に拡散した韓国メディア
 加えて、「北朝鮮の無人機はおそらく軍用ヘルメットなどに使われる先端素材と推定される飛行体のようだが、これを発見したということだけでも莫大な成果と見なければならない」「同好会会員の中で国内飛行禁止区域を数回飛行しても一度も発見されたことがなかったのだから、北朝鮮無人機を発見したのはそれだけ備えがあるということ」と、韓国軍を称賛したりもしていた。
 大邱無人機同好会と彼らを取り上げた嶺南日報は、自国民の技術がいかに北朝鮮よりも優れているのか世間に伝えたかったのだろう。だが、彼らの行動は決してほめられたものではない。
 許可無しに日本の対馬や北朝鮮の金剛山まで無人機を飛ばし、上空から他国領を撮影するなどあってはならないことだ。
以下ソースから

2023.1.12(木)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73458?page=3