米国に滞在中のイ・ナギョン元首相は「米国と北朝鮮が国交樹立できない理由はない」とし、
非核化と関係正常化を漸進的かつ相互的に推し進めるべきだと述べた。

 イ元首相は21日(現地時間)、ジョージ・ワシントン大学韓国学研究所が開催した「朝鮮半島の非核化と平和に向けた現実的・実用的アプローチ」と題する講演で、
「米国は何度が北朝鮮と関係正常化に合意したが、合意は履行されなかった」とし、北朝鮮の非核化努力とともに米国の積極的な政策を注文した。

 イ元首相は、30年あまり非核化交渉が失敗している理由について「北朝鮮の核開発は複合的で複雑な問題だが、
多くのアナリストは北朝鮮問題を主に倫理的尺度でながめてきた」と指摘した。
同氏は、権威主義統治と人権侵害は批判されて当然だが、「北朝鮮の生存欲求を無視」すれば交渉は成功しえないと指摘した。
また「北朝鮮崩壊論」が朝米合意の履行を難しくし、北朝鮮を核武装にいっそう執着させたと分析した。
韓国と米国で国内政治の変化によって政策が頻繁に変わったことも指摘した。イ元首相はこれと関連し、1994年の朝米枠組み合意を引き出したビル・クリントン元大統領が、
ジョージ・ブッシュ政権がそれを死蔵したことについて、金大中(キム・デジュン)元大統領に対し
「私にもう1年だけ時間があれば、朝鮮半島の運命は変わっていただろう」と語ったというエピソードを紹介した。

 イ元首相は質疑応答の際にも、中国と戦略的競争を繰り広げる米国が北朝鮮と国交を結べば「ゲームチェンジャーとなるだろう」とし、
自国を敗戦させたベトナムとも国交を樹立した米国にそれができない理由はないと語った。
また「朝鮮半島は7千万人が住む場所」だとし「米国や中国は朝鮮半島を競争の最前線にしてはならない」と述べた。

 韓国の核武装論については、「危険で愚かであり、韓米関係を悪化させるとともに、東アジアの核兵器競争を触発するだろう」とし、
「平和のためになしうる唯一の選択は、現実的かつ実用的なアプローチを通じた北朝鮮との外交交渉」だと述べた。
同氏は、核武装論の強まりは「政権交代の影響もあるだろう」とし、政府が強調すれば世論に影響を及ぼすと説明した。

 イ元首相は「バイデン政権は初期に北朝鮮政策を見直すと言ったが、今も見直しているのか(政策が)よく見えない」、
「米国は、指導力を保つためには同盟の死活がかかっている利害を無視してはならない」と述べ、米国の積極的な行動を注文した。
北朝鮮に対しても「米国との関係を改善し、国際社会の責任ある構成員として受け入れられるためには、信頼できる非核化措置を取らなければならない」と述べた。

 昨年6月から1年間の予定でワシントンにあるジョージ・ワシントン大学の訪問学者として滞在しているイ元首相は、
今回の講演を皮切りに今月28日にはペンシルベニア大学でも講演を行い、その後もニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルス、デンバーで現地韓人などに対して講演を行う。
同氏は「講演活動の開始を政治活動の再開ととらえてもよいのか」と問われ「講演は大学側と訪問学者の登録条件として約束したもの」だと答えた。
6月にはドイツのテュービンゲン大学とベルリン大学で講演し、帰国する計画だという。
ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

登録:2023-02-23 02:35
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/45995.html