中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は10日、習近平国家主席を3選した。
習氏による長期政権が本格始動したが、中国では65歳以上の人口が2億人を超え、高齢化や人口減といった課題が山積している。
李克強首相は5日に開幕した全人代で「養老サービスを充実させる」と表明。高齢化で中国の先を行く日本には知見を積んだ企業が多く、商機になる可能性がある。

 上海から車で3時間ほどの江蘇省無錫市で2月末、パナソニックホールディングスが現地企業と共同開発した「スマート都市」が街開きし、式典が行われた。
「日本で20年以上蓄積した経験を中国に持ち込んだ」(本間哲朗副社長)と胸を張る全1170戸には、高齢者の健康状態を排せつ物からチェックできる同社製トイレなどが設置されている。
販売価格は1戸当たり300万元(約5900万円)からと高価だが、すでに半数以上が売れたという。
 中国側からの注目度は高く、式典会場には地元メディア記者の姿も目立った。同市の担当者は「(日本から)先進的な理念や技術を学びたい」と話した。

 中国では30年以上続いた「一人っ子政策」の影響で少子高齢化が急速に進んでいる。国連の推計では、2034年には全人口の21%超を65歳以上が占める「超高齢社会」に突入する見通しだ。
社会保障費の膨張が見込まれる中、半世紀以上据え置かれている定年退職年齢の引き上げを求める声も一部で強まっている。
 湖北省武漢市で今年2月、医療手当の削減に怒った高齢者らによる大規模デモが発生した。
社会保障費の抑制は待ったなしだが、共産党政権にとっても「痛みを伴う改革は鬼門」(エコノミスト)だ。
 共産党機関紙系の環球時報(電子版)は2月、日本などが高齢化対策として推進した定年延長を高く評価する記事を掲載した。
中国で今後、高齢化先進国の日本に学ぶ機運が盛り上がりそうだ。

2023年03月10日20時31分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023031000943&g=int