TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加盟する日本など11カ国が、英国の新規加盟を正式承認した。
ロシアによるウクライナ侵略を受けて世界経済の分断が進むなか、公平かつ公正な自由貿易圏の拡大は、
独裁専制主義国である中国やロシアを見据えた経済安全保障の視点からも歓迎すべきだ。
中国当局は、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出計画を非難し、
日本から輸入した水産物に対する全面的な放射線検査を始めたが、タチの悪い意趣返しなのか。
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、自由民主主義国を牽引(けんいん)する日本の覚悟と責任に迫った。

英国が16日、日本などが参加するTPPに加盟した。11カ国で発足したTPPが新規加盟国を受け入れるのは、これが初めてだ。
欧州からの参加は、アジア太平洋で強まる一方の「中国の脅威」に対抗するうえでも意義深い。

2020年にEU(欧州連合)から脱退した英国は脱退後に経済が低迷し、EUに変わる新たな自由貿易協定の相手を求めていた。
TPP参加による経済浮揚効果は英政府の推計で毎年、GDP(国内総生産)の0・08%程度とみられているが、
英国の参加でTPP自体の存在感が高まる効果が大きい。

世界の貿易秩序は世界貿易機関(WTO)によって形作られてきたが、中国がWTOに加盟した後、秩序の形骸化が目立つようになった。
紛争解決機関は米国の反対を受けて、調停に当たる肝心の「裁判官」不在の状態が続いている。
その結果、WTOに提訴しても審理が進まず、ルール違反は「やったもん勝ち」になった。

例えば、米国は昨年8月、インフレ抑制法とCHIPS法を相次いで成立させ、自国の電気自動車と半導体産業優先の政策を進めている。
WTOの内外無差別原則からみれば、違反に当たる可能性が高く、英国や韓国は不満を抱えているが、
WTOに提訴しても意味がないので、黙認せざるを得ないのだ。

日本は3月に米国と重要鉱物サプライチェーン強化の協定を結び、電気自動車に使われるバッテリーの原材料であるリチウムの囲い込みに動いた。
本来なら、WTOルールの強化を訴えたいところだが、背に腹は代えられなかった。

WTOが形骸化するなか、英国を加えて12カ国に拡大したTPPが結束するのは、
米国、EU、ルール無視の中国といった経済大国・地域に対する発言力を強めるうえで意味がある。
日本やオーストラリアなどが個別に声を上げるより、各国がまとまって発言した方が影響力が大きくなるからだ。

今回の英国参加に、もっとも衝撃を受けているのは中国だろう。

中国と台湾もTPPに加盟申請しているが、中国が自由貿易と投資のルールを守るとは、とても思えない。
そもそも、国営企業に対する巨額の補助金が自由経済に背くルール違反なのだ。

そんな中国の加盟を阻止するうえで、英国は日本やオーストラリアなどとともに、もっとも頼りになる存在だ。
TPPの意思決定は全会一致が原則なので、日英両国が反対すれば、中国は加盟できない。
逆に、台湾は日英の後押しが強い援軍になる。

英国はTPP加盟によって、EU脱退のマイナスを補う発言力を確保するかたちになる。
TPPから抜けた米国は独自路線を進みそうだが、EUは将来、TPPとの連携を模索する可能性もある。

長い目で見れば、日米欧を中心とする自由民主主義国は、中国やロシアのような独裁専制主義国と、同じルールの下での共存共栄を望めない。
TPPはやがて、中ロも加わるWTOに代わって、自由民主主義陣営が守る共通ルールのひな型になるのではないか。

夕刊フジ 2023.7/23 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20230723-AB6PRLXGTVMDNJP3S6JZVGDGFQ/

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