東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐって、中国が「核汚染水」と呼ぶなどして「風評加害」を続けている。
これに対し、日本政府が対抗措置≠ノ動き出した。
8月18日、米国で開催される日米韓首脳会談で議題に上げるという。科学的根拠に基づかない中国の「偽情報」に
3カ国で対抗する構えだ。

非常に期待できる動きだと思う。
国際原子力機関(IAEA)や、米国も韓国も「安全性」を認めるなか、孤立化する中国へのメッセージになる。
あらゆる機会を使って、真実を発信していくべきだ。

処理水に含まれる放射性物質トリチウムは自然界に大量に存在しており、世界各国の原子力施設でも希釈して海洋放出している。
福島第1原発では、濃度を国の規制基準(1リットル当たり6万ベクレル)の40分の1、世界保健機関(WHO)の
飲料水基準の7分の1に希釈して流す計画で、国際基準をクリアしている。

外務省もツイッターやユーチューブで、多言語と正確なデータで「処理水の安全性」を発信しており、
大きな反響があるようだ。これらで多くの人々が処理水の安全性を信じている。中国の主張は口先だけで、根拠も示せない。

中国には「日本批判の口実」「外交カード」に悪用しようとする意図が透けて見える。
中国はいつも、何らかの懸案事項を持ち出して揺さぶりをかけている。今回は処理水を材料にしているだけだ。

日本は過去の歴史問題でも、中国の「宣伝戦」や「情報戦」への理解が乏しく、謝罪や混乱を繰り返してきた。
安倍晋三、菅義偉両政権によって、中国の宣伝工作が明らかになった。今回も、世論が動揺しないことが重要だ。

「科学的根拠のなき風評」が大きな問題を引き起こした前例を思い出した。築地市場の豊洲市場への移転問題だ。

石原慎太郎都知事時代に、老朽化した築地市場から、新設する豊洲市場への移転が決まった。
ところが、移転直前になって共産党や市民団体などが「土壌汚染」問題で騒ぎ始めた。

小池百合子都知事は2016年8月、「安全性への懸念が解消されていない」と移転延期を表明した。
結果、多くの関係者が混乱に巻き込まれ、都民の多額の税金が対策に使われた。
石原氏は当時、「科学が風評に負けるのは国辱だ」と嘆いた。

豊洲市場は現在、何事もなかったように「都民の台所」として活用されているだけでなく、
都内屈指の観光拠点としてにぎわいを見せている。
周辺には、ホテルや商業施設、温泉などが次々とオープンしている。あの大騒動はどこに行ったのか。

英語で「ガラスでできた家に住む人は、(他人に)石を投げてはいけない」ということわざがある。
「あなたが完璧な人間ではないならば、他人を攻撃すべきではない」という意味だ。

中国は荒唐無稽な「風評加害」を続ければ、国際社会の信頼を失うことを自覚すべきだ。
日本の政府や政治家は、中国の宣伝工作で世論が動揺しないよう、断固とした決意で海洋放出を実行すべきだ。
■ケント・ギルバート

夕刊フジ 2023.8/4 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20230804-H5KNRZPLYBOFJBIBUBWEKTOVXY/